坐禅、はじめました

色即是空、空即是色

　今年の初め、地球は新型ウィルスの脅威に包まれた。人から人に感染し、命を奪う、人類にとって不倶戴天の敵は温かな春を迎えても収束の目処が立たない。
　人から人に感染すると言う新型ウィルスは人と人の繋がりを決定的に絶たせてしまった。今や、人同士で集まること自体を自粛するように政府が要請する程である。

　人同士で集まれないということは、自然に家に隠(こも)っての生活が推奨される。
私はこの巣篭もり生活に耐えるために「趣味」を作ることにした。私は生まれてこの方、無趣味である。親や友人に何かを勧められても深く「ハマる」と言うことはなかった。
　その親も両親ともが私が独立すると共に病気で亡くなってしまった。一人っ子同士の結婚であったせいか、おじやおばと言った親戚も存在しない。友人もいるにはいるがあくまで表面だけの薄っぺらい関係。恋人なんかも論外だ。
孤独で気楽と言えば聞こえはいいが、傍目から見れば天涯孤独のサミシーおっさんに過ぎない。

　まず、趣味で真っ先に思いついたのがTVゲームだ。私は大学を卒業し社会人になると同時にゲームを卒業した。大学を卒業して以降ゲームのコントローラーすら握っていない。
　そのような訳で大型電気店にゲームを買いに来たのだが、考えることはみな同じなのか、ゲーム機の本体は売っていない。新型ウィルスによる巣篭もりが始まった頃から、皆こぞってゲーム機を買うようになったとのことだった。店員に話を聞いてみても「入荷未定」「入荷しても抽選販売」いつ手に入るかもわからない曖昧な答えしか帰ってこない。

　私はゲームを趣味にすることを諦めた。