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 そして翌朝、瀧本の大きな声で直樹は目が覚めた。 「おまえら起きろ!」 「ひえ!」  パッと目を開けると、なぜか直樹の腕の中に奏真がしっかり収まっていた。慌てて奏真から手を離す直樹へ、瀧本は怒るでもなく千円札を二枚渡した。 「お前らこれで、朝マックでもしてこい。俺は寝るからあんまり早く帰ってくんなよ」 「あ、はぁ。ありがとうございます」  まだ奏真は眠っている。瀧本はかがみ込むと、奏真の体をゆさゆさと揺り起こした。 「おい、奏真。起きて朝飯食ってこい」  のそのそと身体を持ち上げ、奏真が女の子座りになった。まだ寝ぼけているのか、うつむいたまま手の甲で瞼をぐしぐし擦る。  久しぶりに見た寝起き姿に、やっぱり可愛いと直樹は思った。 「ぉあえりなさい……」 「うん。ただいま」  瀧本は爆発した頭を愛おしそうに撫で、さらにグシャグシャ掻き回す。されるがまま頭を揺らしていた奏真は、瀧本の手が離れると大あくびをして、トロンとした顔で直樹を見た。 「直樹もおはよー」 「おはよ。あ、あの、俺、もう帰ります。奏ちゃんまだ眠そうだし……」 「いいんだよ。朝マック行ってこいよ」 「は、はい……」  瀧本も夜勤明けで眠そうだった。直樹がオロオロしていると奏真がやっとフラリと立ち上がる。 「んー、行こう。お腹すいた」 「う、うん」  直樹達はTシャツに短パン姿のまま、夏の朝の爽やかな空気の中を二人乗りしてマックへ向かった。朝の七時。さすがに店内は空いていて、がら空きのレジでオーダーする。 「やっぱベーコンエッグマフィンセットだよねぇ~。と、コーラください」 「俺もそれー」 「奏ちゃんもコーラ?」 「うんうん」  朝日の差し込む窓辺の席。四方八方に爆発した髪の毛を気にすることもなく、「はむっ」とマフィンにかぶりつく奏真を見て、直樹は幸せな気持ちになった。 「おいしいね」 「やっぱ、マフィンとソーセージだね!」  二人でまた心から笑い合いたい。だから……。  直樹はこの日、奏真への気持ちを決して表に出さないと心に決めた。
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