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ワタシは宇宙人 「生まれた日の記憶」 #01
わたしは東北の山奥にある小さな集落で生まれ育った。
この地球という星はやっかいな場所だ。
この星で生きるということは、わたしにとっては試練の連続だ。
これはそんなわたしのノンフィクション物語である。
1979年。
夏至を迎えて2日程過ぎた日のことだ。その日は日曜日で晴れていた。その昼下がりの事である。
わたしは、母の子宮から産道へと押し出されていた。母の産道は狭く苦しく、何せ地球に生まれてくる事を選んだ事に後悔の思いで一杯だった。
"そう。わたしには産道からの記憶があるのだ。"
『生まれたくない』『いやだ』『外に出たくない』
わたしは粘りに粘って、産まれることを拒み続けた。心の奥底では戻ることは出来ないと分かっていながらも、全身で抵抗した。抵抗すればする程、ますます狭く苦しく恐怖が襲ってきた。
そんな時、わたしの足元から声がしてきた。
"抵抗はやめてください。先へ進んでください"
"やっとここまで来たのですから。あの方が来てしまいますよ"
姿は見えないが、どうやらわたしには2人の付き人がいた。これが守護霊というものなのか、抵抗しているわたしに必死に生まれるよう説得しているのだ。
そんなこともお構いなしにわたしが『絶対やだ!!』とワガママを言った時だった。
"いい加減に先へ進みなさい。ここまで来たら、前に進むしか道はないのだぞ。"
それは太く威厳のある声だった。その声を聞いて、わたしは縮みあがった。
わたしには2人の付き人の他に、もう1人いるのだ。その人はよほどの事がないかぎり滅多に口を出してこない人なのだ。これがいわゆる指導霊というものなのかは分からないが、とにかく怖い人がいる。
"やっぱり行くしかないか…"
と、やっと諦めがつき先に進もうと腹をくくった。
そこからが早かった。背中を押されたかのように、あっという間にスルスルと出口へ向かった。
真っ暗な世界から、目が眩むような白い世界へと抜け出たのだ。まもなく、わたしは苦しみから一瞬で解放された。
真っ白い世界の中に、薄っすらと何かが霞んで見えているが、はっきりは映らない。
"とんでもない所に本当に来てしまった…"
次の瞬間だ。
急に苦しくなり、もがいた。とっさに口で息を吸った瞬間、胸に激痛が走った。まるで針で刺されたかのような痛みだ。わたしは『助けて』と叫ぶように泣いた。
しばらくすると胸の痛みは和らぎ、疲れがドッと押し寄せてきた。まるで麻酔をかけられたかのように強烈な眠気が襲ってきた。
この先一体どうなるんだろう…
そんな事を思いながら、わたしは深い眠りについた。
ここは地球。母なる青い水の惑星だ。
わたしは何かをしたくてこの地球に生まれてきた。自分からあえてこの時代に生まれたのも分かる。でも生まれたばかりのわたしは、深い眠りと共に大切な何かを忘れてしまったのだ。
"生きていればいつか思い出すだろうか。"
こうしてわたしの地球での人生が始まったのである。
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