9人が本棚に入れています
本棚に追加
ワタシは宇宙人 「無くした涙」 #07
ある朝、教室に入るとわたしの机はポツンとそこにあった。
どうやらわたしの机はバイ菌で汚れているらしく、周りの机は遠ざかっていた。
授業中は後ろからモノが飛んできた。どこかからクスクスと笑う声が聞こえてくる。でも、怖くて振り返れなかった。
廊下や教室で誰かとすれ違うと
"うわっ、汚ねぇー。来んじゃねぇ。見るな。"
と言われ避けられた。
わたしが給食当番のときは誰も取りに来なかった。そんな時は担任が黙って代わってくれた。
わたしには、ただひたすら我慢することしか出来なかった。
"それはセミの鳴く暑い日だった。"
部活の先生に呼び出された。
どうやら、わたしが教室では調子に乗っていて、部活に来ると大人しくなっていると誰かが告げ口をしたようだ。
わたしにとっては一体何の事なのか理解に苦しんだ。誰とも話してないのに、なぜ。
わたしに悪いとこがあれば直します。だから教えて欲しかった。わたしの悪いところを誰かが教えてくれれば、わたしはずっと楽になれた気がした。
決心して、先生に聞いた。
"先生……わたしの何がダメなのでしょうか。"
その拍子に、先生は手に持っていた指揮棒を床に投げつけ、譜面台を蹴り飛ばしてきた。
わたしは失禁しそうになった。足は細かく震え、ツバもまともに飲み込む事が出来なかった。
"おめぇの存在がダメなんだよ!お前なんか生きている価値もない人間なんだよ!クズ人間。"
そう言って立ち去って行った。
あれ…
おかしいな。涙も出てこないや。
悲しいのに、辛いのに、苦しいのに、涙が出てこない。
"お父さん、お母さん、わたしみたいな人間が生まれてきてごめんなさい。生きていてごめんなさい。"
それからわたしは笑えなくなった。
相変わらず誰とも一言も口を聞かない日が続いた。
わたしは毎日、ただ静かに息をしていた。
"神さま、教えてください。わたしに生きる価値はあるのでしょうか。"
最初のコメントを投稿しよう!