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ワタシは宇宙人 「夕暮れの虫」 #08
わたしは人より変わっている人間だ。生きている価値のない、いるだけで迷惑な人間なのだ。
わたしは中学2年生になっていた。
相変わらずイジメは続いていた。
"人は何のために生まれてくるのだろう"
哲学的なことを毎日考えていた。
"生きていれば答えは見つかるのだろうか"
そう思いながらも、『死』という言葉が付きまとった。
"死にたい…"
いつもそう願うようになっていた。
両親にはいじめのことは口が裂けても言えなかった。悲しませたくなかった。
いつか良くなるよね…
そう信じて、我慢して我慢して我慢した。
たくさんたくさん謝った。
でも状況は酷くなるばかりだった。
ある日の夕暮れだった。
"わたしもうダメだな…"
死に場所を見つけようとついに家を出た。
しばらくすると、うしろから祖母が追いかけてきた。
"こんな暗くなるのにどこさ行くんだ?"
わたしは言葉に詰まった。
"婆やも連れてけ。どこでも一緒に行くから。"
そう言うと、息を切らしながらわたしの手をギュと握った。
婆やのことなど連れて行けるわけがない。
気がつくと涙がボロボロ出てきた。どんなに悲しくても涙のひとつも出なかったのに、後から後から涙が溢れてきた。
何も聞かずに祖母も一緒に泣いていた。
その時に分かったことがあった。
"生きるってひとりじゃないこと。自分だけの命じゃないこと。そして、わたしも生きてるだけで誰かの役に立っているのかもしれないということだ。"
祖母と手を繋ぎ子供のように泣きながら、こうして薄暗い道を歩いて家へと向かった。
先に見える家の明かりがいつもより明るく感じた。
虫の声が力強く鳴いていた、秋の夕暮れの忘れられない出来事だった。
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