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「無礼よ、このブスども!何するの、私を誰だと思ってるの!?この国で最高の権力者の姫、この国で一番美しい姫にあんた達ごときが触っていいとでも思ってるわけ!?誰か早く、私を助けなさいよ、ねえ!!」
おかしい。夢小説の主人公ならば、イケメンがかっこよくここで助けに来るはずなのに。夢ヒロインを傷つけるクズ女達を冷たい目で見下してざまぁして、可憐なお姫様を抱きしめてキスをしてくれるはずなのに。
私を愛してくれるはずのイケメン兵士達は、うずくまって固まったまま動かない。――明らかに、チート能力の効果が弱まっている。
――ま、まさか。赤の国の勢力が他の国に圧されているせいで……女神の力が弱まったの!?
「あんたみたいなお姫様なら、いない方がずっといい」
ボロボロの服を着た農民らしき女が、ギラギラした目で私を睨んだ。
「私の夫は、あんたの滅茶苦茶な命令に従ったせいで戦場で無駄死にしたの!夫は、武器を持って戦うことは素人でも、果物を育てて売ることがとても得意な、優しい人だったのに!」
「あたしの旦那もだよ、このクソ女!」
別の女が、血走った目で叫ぶ。
「あたしの旦那は、あんたに見初められたせいで……あたし達を捨てて兵士になっちまった!この国の外に戦いに出たところで目が覚めて、あたしのところに泣いて帰ってきたよ……自分は家族を裏切って姫様と関係を持ってしまった、死んで詫びるしかないって。苦しんで苦しんで首を吊った、あんたのおかしな魔法のせいさ!!」
「私の弟も!」
「アタシの兄貴もだ、返せこのクソ女!」
「あんたのせいで、男達はみんないなくなった、死んだ!みんなの家族を返せ!」
「お前みたいな女は姫様でも、女神に認められた聖女でもなんでもない!何が勇者だ、自分は城で贅沢三昧して、ふんぞりかえって命令してるだけのくせに!!みんなが助けて欲しい時、面倒くさいからって話を聴くこともしないくせに!!」
「人の心を捻じ曲げ、平気で傷つける悪魔め!死ね、死んでしまえ!」
「死ね、死ねー!!」
こんなのおかしい、と。私は唖然とした。
――嫌われ系は、好みじゃないのよ。なんでこんな展開になるわけ?そもそも嫌われ系なら、最終的にはイケメンが私の味方をしてくれて、誤解されている可哀想なヒロインを助けてくれて、悪女どもを断罪してくれるはずでしょ?
自分は女神に認められた存在であるはずで、いつもいつでも正しかったはずだった。それなのに、何故今こんなふうに縛り上げられて、どんな拷問の末に処刑しようかという相談が目の前でなされているのだろうか。
――ねえ、誰でもいいから早く助けに来なさいよ!あんた達の可愛いヒロインがピンチなのよ?今こそあんたらの株上げる時でしょ?こ、このままじゃ、私……!
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