偽ヒロインは認めない

6/6
前へ
/6ページ
次へ
 ***  後に、女神は語る。  異世界から転生してきた、本来ならば存在するはずのない“異物”。歪んだチート能力を与えられても、どれほど美しい容姿を得ても、その本性が変わることがなければハッピーエンドは迎えに来ないのだと。 「異世界転生なんて、ほいほいするもんじゃないわね。次はこの世界から、ちゃんと勇者を見出すようにしないと。ほんっと、これだから自己愛しかないワガママ転生者は困るわー」  反省の色などまったくなく、女神は呟く。  果たして、一番性根が腐っていたのは誰であったのか。  どのような展開と選択が、この世界における最善であったのか。  残念ながら、その答えが出せる者は此処にはいない。 「全身に油をしみこませた包帯を巻いて、足の先から燃やしてやるのはどう?」 「お湯の入った釜に閉じ込めて、ぐつぐつ煮てやるのも悪くないと思いますが」 「それもそうだけど、やっぱり一番憎たらしいのはあの女の欲望でしょう?なら、女の象徴を一つずつ潰してやる方がダメージが大きくない?」 「苦しい拷問はひとしきりすべて試せばいいのでは。楽に死なせてやる義理などないのですから」  恐ろしい相談をわざとらしく聞かされる姫は。当然何一つ、知る由などないのである。 「いや、やめて……死にたくない、私悪くないのに、悪くないのに!いや、やめて、やめてええええ!」  愛なき偽ヒロインが、認められることなどない。  それが、世界の真実である限り。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加