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「それで、蒼太の行きたい島ってどこにあるの?」
僕の部屋で地理の教科書を開きながら、蒼太が指差した場所は海にポツンと浮かんでるすごく小さな島だった。
【神季島】
聞いたことない名前だ。そもそも沖縄の離島なんて、本当に有名な場所しか知らないけど。
僕たちが住んでるとこは、山ばっかりで海がないから海にはほとんど行ったことがない。
地図を見てると、僕たちの住んでるところからはあまりにも遠すぎてなんだか日本じゃないみたいだ。
「ここさ、こないだテレビでやってたんだよ。神季島に子供が全然いなくて、島の学校が廃校になりそうなんだって。それで島の人たちが他の県からこの学校に通う生徒を募集してるんだって」
蒼太が地図に印をつけながら言った。
「蒼太は、この島の学校に通いたいってことなの?家出までして?」
「いっちゃん、誰も家出なんかするって言ってないでしょ。夏休みの間だけ行くんだよ。この島は子供がいないんだから僕たちがが行ったらすごく歓迎されるよ。ご飯も泊まるところも用意してくれるはずだよ。だって子供がいなかったら廃校なんだから。だったら後は交通費だけだよ。それくらいなら親に適当なこと言ってもらおうよ。一週間くらい勉強合宿にでも行くって言ってさ、それで夏休み中いられるだけ沖縄の島にいようよ。ひと夏のバカンスを楽しもうよ。ね、良い考えじゃない?」
蒼太にそう言われるとかなり無茶苦茶な気もするけど、確かに良い考えにも思えてきた。
「そりゃ、離島には行ってみたいけど、そんな適当な計画で上手くいくか?面白そうではあるけどさ」
「ダメでもともとだよ。とりあえずやってみようよ」
蒼太はもう沖縄のガイドブックまで買っていて、青い海やおいしそうな沖縄料理、デザートの写真を見ているうちに僕もすっかり離島に行きたい気分になってしまった。
「僕も沖縄気分になってきた」
「でしょ?行こうよ。きっと楽しいよ」
確かに何もせずにこうしてゲームをするだけで、夏休みが終わってしまうのももったいない。
「じゃ、とりあえずうまく沖縄に行けるように、ちゃんと計画をたてるか」
僕は蒼太の提案にのることにした。
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