第五話「サイコキネシスの可能性」

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 そう思いながら、少しだけ覚醒した身体でマグカップにミルクとスティックシュガーを入れる。  朝は糖分を入れないと頭が動かない。糖が身体にスイッチを入れるらしい。だから、寝起きに口にするものはなんとなく甘いものを選んでしまう。  元々ブラック派だった遼汰の部屋にミルクと砂糖を持ち込んだのは光留だが、この男はコーヒーに一切混ぜ物をする気が無いらしいので、いつまでも減る気がしない。 「ヒカは、今日何限だっけ?」  本来の時間割では1,3,4限の3コマの日だが、 昨日の晩に“見たところ、、今朝の1限目には不定期の出席確認もテストの情報もないらしい。というか、どっちにしても今から身支度をしても1限には間に合わない。 「3限からってことにした」 「なんそれ」  しれっと言うのを聞いて、遼汰が吹き出した。  彼も1限あるだろうに。こっちはわかっていて休むけれど、そっちの出席は知らないからな。 「それじゃあ、お互いもうちょいゆっくりできる?」  悪戯っぽい笑みを浮かべた遼汰の腕が腰に伸びてくる。まあ、別に悪い気はしない。3限に間に合うだけならまだ2時間以上の余裕があるし。 「ごめん、今日は予定あるんだよね」  遼汰の手を叩くとペチンといい音がする。遼汰はすぐに手を引っ込めて、おどけたように両手の平を見せてきた。  しばらくにらみ合いが続いてから、どっちからともなく笑いだす。  最近はずっとこんな感じだ。  遼汰と一緒にいるのは楽しい。緩やかな時間というか、お互いに冗談を言って笑いあえる関係が気楽でよかった。
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