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見せるもの、ちがうでしょ
校門をくぐると、タカコはスカートをずらし、腰のところからチラ見せする。
「ね、いいでしょ、この色。6月は水無月というから水色にしてみました」
たしかに空色のそれはきれいだと思う。梅雨入り前で、それを予告するような曇り空のおかげで、さらに色が映える。
空は曇っているのに、スカートの中は晴れているようだ。
「うん、いいじゃん」
「あげはは?」
「あたしは見せるほどのモノじゃないから」
「えー、今日も見せてくれないのー」
「だから見せるほどのモノじゃないってば」
「けち~」
これである。
わが校は何故か、女子が下着、おもにパンツをチラ見せするのが流行っているのだ。
いつ誰がはじめたかは分からないが、それは[パンチラファイト]と呼ばれ、スカートをまくったり、ずり下げたりして、チラ見せしてきゃあきゃあ言い合っている。
教室に入って席に座る。すると後ろの席のヤツがスカートをずり下げようとするが、すぐに両手でガードする。
「ちぇ」
「ちぇっ、じゃないでしょうタカコ。見せるモンじゃないって言ってるじゃん」
紅あげはの後ろの席は、佐藤タカコなのである。
「なぁに、あげは。またやってんの」
前の席から、呆れた感じで話しかけてきたのは、カトーちゃんこと、加藤ジュリナ。茶髪のポニーテールを揺らしながらこちらを見る。
相変わらず眼福する美人である。さすが読者モデルをやっているだけのことはあるな。
「カトーちゃんも言ってやってよ、パンツは見せるもんじゃないって」
「あら、アンダーは魅せるものよ」
は? なんかニュアンスの違う返事が返ってきたぞ。見せるもの じゃなくて 魅せるものだと?
「世界的な美術品をご覧なさいな、若くて綺麗な女のボディラインに魅せられて絵画や彫刻の素材になったものが何と多いことか。それをさらに綺麗に魅せるランジェリーは魅せて当然じゃない」
カトーちゃんがこっちを向くと、前のめりになってあたしに近づく。
おかげでセーラー服の胸元から、高そうなブラが見える。
「おお、さすがカトーちゃん。見事な谷間ですなぁ」
タカコの称賛に、カトーちゃんは当然のごとく微笑む。
「そりゃカトーちゃんみたいなボンキュッボンならそうでしょうけど、あたしやタカコみたいなのは、見せるほどのモンじゃないわよ」
「道連れにしてディスるな。どうせ標準体型ですよーだ」
タカコの言葉に笑いかけたカトーちゃんが、手を振って、あたし達の後ろの方に挨拶をする。
つられて見ると、そこには我らのマスコット的な存在、小柄で小動物的可愛さのビトーちゃんが来たところだった。
あたし達も手を振って挨拶すると、振り返して微笑んでくれる。かわいい(はーと)
ビトーちゃんが席に着くと、タカコは席を立って近づく。
そして何やら耳元でささやくと、ビトーちゃんが真っ赤になり頷いた。タカコはにんまりすると、戻ってくる。
「何を言ったの?」
「ないしょ。パンツ見せてくれたら教えてあげる」
けっこうよ、と答えると、先生が入ってきてホームルームが始まった。
あたしは後ろをガードしながら、授業の用意をするのだった。
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