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この世には知っていい事と、知らなくてもいい事の二つがある
その中で、俺のこの丸っこいボディーの原因を知ることは良いことなんだが
バケツに写る自分の姿を見て一瞬、硬直し頭の思考を回転させる
『 これは、犬か……? 』
初めまして新しいボディー
丸っこい顔立ちに短い手足、目尻は吊ってるも丸っこい瞳は濃い青色をして、鼻から下の半分の毛は灰色をしてるのに、半分から上の背中側は真っ黒だ
身体のフワフワ加減やら見ればロン毛の犬にも見えるが、どちらかと言えば狼のように硬そうにも見てる
『 狼か……それも子犬…… 』
狼を子犬と言うのかは分からないが、丸っこいボディーの理由が幼い体型だと理解した
よく育成ゲームとかで見る、レベル一位の弱いモンスターがレベルが上がるにつれて進化します、みたいな感じの外見に、この世界がどんな場所が想像が出来てきた
『 つまり俺は、レベル一のモンスターでノアは其を世話するパートナーってことになるのか? 』
ノアが?とバケツから手を離して振り返れば、そこにはふかふかの羽毛を堪能してる、見た目は小学低学年の子供がいた
『( いやいや、絶対に自分でなんとかした方が強くなれそうだろ…… )』
昨日の様子からして、レベル上げをしないような子供だ
それは良いとして、強くなるというか精神年齢大学生の俺が、体型が子犬ってことが気に入らないのだ
どうやって成長するのか分からないし、
もしかしたら獣のように時間と共に大人になるのか
そうすると長くこの身体とお友達ってことになる
『( 子犬扱いされてたから抱っこされたわけか…… )』
昨日の一連の様子を思い出すと、自分の甘さに頭が痛くなる
上手く歩けなかったのはこの身体に慣れてないから、今は使い方を分かってきたから出来るだけ歩こうと決めた
『 なぁ、馬さん。俺は狼なんだろうか 』
「 あははっ。だから言ったさ。君は銀狼とは違うのかと 」
毛並みの色は確かに銀色には思えないし
俺の想像するファンタジー世界の狼ってもっと、こう強そうなイメージだが今の外見は強そうには見えない
実際に歯も小さいから弱いだろう
あの自称 神様が言ってた" 速い脚 "なんてものも今は無いと思っていい
成長してから走れるのは想像できるほどに
今の俺には力が無い
『 俺は、成長出来るだろうか? 』
「 そうねぇ。私達のようなものは旅をし、経験を積めば大人になる。けれど肉食の狼の事は知らないねぇ 」
「 同じではないかしら? 」
『 えっ? 』
他の声に気づけば、此方の話を聞いていたらしい
羽毛馬が顔を向けていた
声のトーンからして彼女の方が若々しく思える
「 何事も経験だと思うわ。本能のままに過ごせばいいのよ 」
「 確かに、其が一番だろうさ 」
『 本能のままに…… 』
俺が一番、苦手な言葉だ
直感で動くなんて肉体派ではなく、どちらかと言えば理系で考えてから動く俺には
本能のままに、感じるままに、って具体的な事を分かるわけもなく
頭に浮かぶのは疑問符だけ
『 まぁ、でも……考えていても仕方無いか。色々とありがとう 』
何はともあれ、自分の容姿が分かっただけでも十分かと納得し
御礼を言えば羽毛馬は目を丸くし、彼女達は其々に笑った
「 ふふっ、狼に礼を言われたのは初めてだわ。どういたしまして 」
「 あははっ。面白いことも有るもんだねぇ 」
『 ……そ、そうか 』
俺は狼、立場からしたら襲って喰う側なのだろ
だからこそ、礼を言われた事の無い彼女達には
面白い事なんだな
何処か納得していればノアが戻ってきた
「 ノワール、そろそろみつかっちゃうからいこ! 」
『 ガウッ!( 分かった。それじゃ、また何処かで )』
「「 ヒヒィーーン! 」」
此れからの事を考えるには十分なことを教えてもらった
ノアに呼ばれて着いていく中で俺はどこか満足していた
ペットとしての生活は気に入らないが、獣としての生活なら面白そうだ
『( 丸っこいボディー!俺はこの身体を認めてやろう )』
コロコロした体型も幼いから
成長することを夢に見て、走るノアの後を追い掛けた
いや、ノア……子犬ってことを思い出してくれ
「 ノワール……つかれたの? 」
『 ハァー、ハァー……( この町……段差多くね…… )』
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