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町並みは古い中世のヨーロッパにも思える
どっかの映画の海賊が立ち寄りそうな町は
人々の活気で溢れていた
食べ物は直接売られ、服装は質素で色味は地味と言えるもの
少年が帰った民家はそんな町の中にある、小さな二階建ての家
一階にはリビングにキッチンとテーブルが有るだけで、後は二階へと繋がる階段
全体的に木で統一され、酒樽なんかも置いてある様な内装に興味すらある
日本でこういう民家は無いだろ
あっても日本建築であり板の間で畳とか堀りごたつとかのイメージだ
やっぱり此所は日本ではないな、と少年の腕の中から辺りを見ていれば
彼は俺をクッションのある木箱の中へと降ろした
「 ノワールのせきはここ、ごはんたべるからまっててね 」
『( ……まるで、ペットだな )』
置かれたクッションは手作り感がある
縫い目すら細かいが、手縫いにも見える
それにクッションには既に俺の匂いがついてるのに、此所に来た記憶はない
どっかの獣の身体を借りて生きてるのか、それなら俺はペットなのかと、嫌気がする
少しだけ初めてみる景色を楽しんでいたが、ペットの感覚に気持ちは沈み、身体を丸めて瞼を閉じる
「 ノワールと何処まで行ってたの? 」
「 まちはずれのおかまで!ノワールがね 」
俺の名前のはずなのに、俺の事を言われてるように思えない
鼻に付くシチューの様な食べ物の香りは、人間だった俺は好物なのに、今は食欲が湧かなかった
新しい環境だからか、其とも姿が獣になったから、とか分かるわけもなく
只、この日は俺に与えられる食事は無かったと言うこと
優しげな少年が忘れるはずもないし、このニコニコしてる家族がペットに食事を与えないようにも見えない
一つ考えられるのは、俺の身体は空腹にならないってことだ
「 ノワール、ノワール 」
『( ん? )』
どの位、寝てたか分からないが
少年に呼ばれた声に顔を上げれば既に辺りは暗く
彼の服装は見たときより数枚脱いだようにも見える
寝巻きと言うのか、薄い布切れの服と半ズボン程度で寒くないのかと心配になる
けれど、彼は暗闇でも分かるほど笑顔を向ければ俺の身体を抱き上げる
「 いっしょにねよ、ノワール 」
『 グウッ……( 寂しいのか? )』
この位の子供なら一人で寝るのは寂しがるものか
俺はどうだっか忘れたが、寝るぐらいなら構わないと小さく返事をすれば
少年は俺を連れて二階の階段を上がった
夫婦が居たはずだが、少年の部屋は一人部屋だった
二階は寝室しか無いようで、子供部屋にしてはシンプルな部屋にはベッドと机、そして本の数が少ない本棚程度
御世辞にも裕福には見えないことは気付いていた
けれど、幸せそうな彼等の会話を聞いていたからこの生活に満足してるのだろう
「 ノワール、ゆうしゃのはなしをしようか 」
『( ゆうしゃ……勇者? )』
ベッドに置いた俺に少年は既に枕元にあった絵本を持ち、布団に入り
俯せになり一ページ目を開いた
少年の横でこの世界の本なら、と興味を示した俺もまた同じく俯せになり本へと視線を落とした
彼はゆっくりと話始めた
" まだ人とドラゴンが対立していた時代。
ある村に、平凡な少年が暮らしていました。
彼は病気の母親に代わり、家事も仕事も全てやっていました。
ある日、風邪で寝込んだ母親の為に薬草を取りに行った少年は、森の中で傷付いた獣と出逢いました。
一生懸命に探して手に入れた薬草。
けれど少年は迷うことなく獣の手当てをしたのです。
薬草を煎じて塗り、古びた服を切り包帯として巻き付けて少年は言ったのです
「 早く元気になりなよ 」
其の言葉を言ってもう一度薬草を探しに向かった少年
でも、村を出たことのない少年は知らなかったのです。
その獣がどんな傷でも治る" 聖獣 "だと。
薬草なんて" 無意味 "だ、そう聖獣は思い直ぐに少年を追い掛けたのです。
「 何故ついてくるんだ? 」
少年は歩いても歩いても着いてくる獣に不思議で仕方なったのです。
怪我をしてるのもあり、獣を歩かせることすら悩み、止めた少年は森で休むことにしたのです。
その日の夜、少年は大きな声と音と共に目を覚ましました。
ですが隣に居た筈の獣の姿はありません。
少年は獣が元気になって離れていったのだと安心してから、音のある自分の村の方へと走っていったのです。
「 そんな…… 」
少年が村に付いた時には
辺り一面を火の海へと変えたドラゴンが居たのです
ドラゴンは悪戯好きでちょっと遊んだ程度ですが、その頑丈な鱗に覆われた巨体と鋭い爪、牙は村の人が追い返すには力及ばず
ドラゴンが暴れるのを只、逃げるしか無かったのです。
少年は急いで自分の家に行き
火が燃え移った家から、母親を探しなんとか救出しました。
ですが、母親は酷い火傷をし周りの村人も死者が出始めていました。
少年は悪戯程度に遊ぶドラゴンが許せなくなり声を張りました
「 おい、デブ。自分の住みかに帰れ 」
「 あ"?人間風情が我に指図するのか? 」
武器も持たない少年に、ドラゴンは睨み
口から業火を放ったのです。
防ぐものを持たない少年は焼け死ぬ覚悟で顔を背けたものの
いつになってもその業火は当たらなかった。
「 なんで……おまっ、どうして!? 」
少年は目の前に立つ、ウルフの姿をしたあの獣が水を操り壁を造っていたことに気付いた。
「 手当てくれた恩ぐらい返すよ 」
獣が喋った事よりも、水を操る魔物がいる事を知った少年は獣が空へと吠え
雨雲を呼び雨を降らしていたのを只見ていたのです
「 クソ、聖獣が相手なら面倒だ……ふっ、勝ったと思うなよ!! 」
水に弱いドラゴンは尾を巻いて遥か遠くに逃げて行った。
ドラゴンを追い払った少年は村人から
" 勇者 "と呼ばれるようになり
聖獣は勇敢な少年を気に入り彼が生涯死ぬまで傍に居たのです。
こうして、人々に被害をもたらすドラゴンを追い払い退治する人を勇者と呼び
彼等は共に闘う" 召喚獣 "が必ず共にいるようになった。"
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