7話 味方になるらしい

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~ フィンレー 視点 ~ 可愛い番が一生懸命に作った、壁を壊すことに胸が痛む あれだけの魔力を階級(ランク)が上がったばかりの聖獣が使えば、召喚師の方には大きな負担になる もう止めてやりたいと思うのに、身体は勝手に動き、吼える度に雷を降り注ぎ、冷たい氷の地面を砕かせるように幾度と無く地鳴りを繰り返す その度に、ロルフが元に戻すのを見れば視線の先にいるリリアを殺したくなる 「 フェンリルの意思を向けさせるんだ!! 」 「 撹乱だな!分かった! 」 「 銀狼に任せな! 」 「 子犬風情が小賢しい!! 」 「「 !! 」」 向かって来るウルリヒ盗賊団は銀狼に跨がっていた 此が、銀狼を従える者達なのか…… 落雷を落とす位置を変えれば、彼等は左右に散らばり 近衛を倒すこと無く、リリアへと向かっていく 「 グアッ!!( 召喚師を守る働きがある以上、銀狼程度が俺に勝てるわけねぇだろ! )」 身体は動き、片手で銀狼を蹴散らすよう動かせば 図体がデカイ分、動きが鈍くなるこの身体は岩の様に重い 鎖を鳴らし、銀狼を蹴散らすよう其々片手で振り払えば彼等は走り待ったまま一定で動くことはしない 「 ガアッ!! 」 「 ギャァァァアア!! 」 「 !? 」 サラマンダーの悲鳴と共に獣の声に、視線を向ければ ライアン王へと噛み付いたロルフの姿があった 「( まさか、俺の気を逸らす為だけにか )」 ロルフが王を殺したのなら、サラマンダーの契約は解除されるだろう 止めを刺したように当たりにあった炎は消え、ライアン王の身体は地面へと落ちた 「 いやぁぁあ!!お父様!!! 」 俺を操っていたリリアの意識が逸れると同時に、魔法は解け、俺の身体は小さくなり地面へと横たわった 「 フェンリル、少しじっとしとけ 」 「 元々味方だからな…… 」 勝手に動く身体ほど魔力の消費が激しいものはない 疲れたと横たわったまま動くことを止めた俺に、ファルクは軽く笑ってから ライアン王へと駆け寄ったリリアの方に行く 彼女の前には、姿が変わったやっと成犬の様に見えるロルフが立っていた 黒い毛並みは一部が灰色に変わり、纏っていた氷は役目を終えように砕け、風と共に粉へと変わる 体格も少し大きくなったんじゃないかって思え、一人口角を上げ笑っていた 「 お父様、やだ……そんな…… 」 「 リリア。もう止めよう?魔法に囚われるのは良くない 」 「 嫌よ!やっと私の国は力を得たのよ!!媚を売って生活する、貧困なんて認めないわ!! 」 力が無い国は、守るために少ない資源を他国に渡し争いを避ける それが当たり前だと思っていた、ライアン王の前にいた王様達はそう過ごして来たのだろう 乱して声を張るリリアに、ファルクは困ったような表情を見せては片手を向けた 「 俺と一緒に国を立て直そう。一から始めては見ないか? 」 「 っ、嫌よ。嫌よ……私は負けたくないの、フィンレー!! 」 俺の名を呼んだ事で、自然と起き上がる身体に辺りに居た者達は警戒の色を見せる ゆっくりと歩き、リリアの元へと向かう俺の前なロルフは塞ぐように立った 『 フィンレー……お疲れ様…… 』 「 はっ、先に戻って、いつもの寝床で待っている…… 」 『 あぁ、待っててな 』 頬を擦り合わせ、首を絡めるように互いに擦り合わせればロルフはゆっくりと離れた そして、ファルクが止めるより先にロルフの身体は動いていた 「 !! 」 「 ロルフ!! 」 俺に主を殺すことを止めさせてくれたロルフは、自らの主が一時(ひととき)でも愛した者の息の根を止めた 倒れた少女へと駆け寄ったファルクはその身を抱き涙を流す 「 そんな、ロルフ。なんてことをしたんだ……!! 」 『 ルイスの娘が犯した罪。それは俺の娘でもある子の罪。だから、俺が責任を取るよ。百五十年前に……娘が王妃になったことを、知らなかったのだから…… 』 目の色がうっすらと消え、少年の腕は赤く染まっていく 俺の足元には懐かしくも早い魔方陣が現れた 「 一つの国は滅んだ、雷鳴の巨狼の力を求める者はまた数百年後まで現れないだろ。其まで、世界が平和で有ることを願う 」 軽く笑みを向けてきたロルフに、先に戻ると合図しては俺の身体は魔方陣の中へと消えていく 彼奴がこの後、どう過ごすかは俺には分からない また土産話を楽しみにしていよう 「 お帰り、ブランシュ。幼い子に助けられたな? 」 「 あぁ……。沢山殺す前で良かった…… 」 ライフの声を聞き、いつもの寝床に戻ってきた俺はゆっくりと目を閉じ深く眠りについた 消費した分の魔力を元に戻すまで、眠っていよう そうすれば、ロルフは戻ってくる 「( あれは随分と面白い、聖獣になりそうだ…… )」 操られた聖獣が沢山の者を殺すのは、少し前に見たことだ 毒蛇(ナーガ)の姿をした毒蛇神(ヴァイパーゴッド)の" ウィペラ " 彼奴のようになる前で良かった 御前にまた一つ借りが出来たな……
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