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可笑しいと、思ったときには子猫は俺の大きさを越えていた
それはファルクも思ったのだろう
彼は考える事を止めたように何も言わなくなった
『 いや!!なんか、いえ!! 』
「 ぱぱ~? 」
「 半年で金狼より成長したことに、驚いてるんだよ……。食費も結構するし…… 」
銀狼は人の言葉を話せないが、この子猫ではなく大猫は俺の背中に乗って押し潰したままパパと呼びゆらりと太くて長い尾を揺らす
俺はこれを、人間だった頃に遠足で行った動物園で見たことある
そう、檻の中にいたあれもまた真っ白で、ルークのような縞柄が入っていた
『 虎だろ!?こいつ、ホワイトタイガーとか言うやつだって! 』
「 なにそれ? 」
『 魔獣の一覧とかに無いのかよ、デカい虎!! 』
「 魔獣は新種も増えるからなー。本は探してみるよ 」
『 頼む!!このままじゃ俺が食われちまう!! 』
気付いたときには子猫は、子猫とは思えないほどでかくなり
体重三百㎏を越えていた
雄らしいがデカいし、重いし
容赦ない猫パンチで首の骨が折れたことあるし
今だって背中に乗ってるのが重すぎて窒息死しそうだ……死にはしないが
「 分かった分かった。今日は図書に行ってくるから御前は外で遊んできてね?部屋が壊れる 」
『 行く…… 』
コクりと頷き、ファルクが仕事へと行けば
静かになった部屋にはルークの暇そうな声が聞こえる
『 ほら、遊びに行こう 』
「 ギャゥ!! 」
やっと上から退いてくれた事に安堵しては、部屋が壊れるのを避け、外に行く
比較的に俺の後ろを追い掛けるために、そこまで散歩に困りはしない
先を歩く俺に、楽しそうに着いてくるルークはまさに白虎
離乳食始まる前に身体に虎柄が出てきた辺りで気づけば良かったのだが
余りにも俺にとって成長が一瞬だったから、気付けばこの姿
世話してもらう人を探し、何処かに連れていく事を考えるより、先に大きくなっていたのだ
「 ねぇ、パパ……なんで、おれは、ほかのこと、ちがうの? 」
外を歩けば銀狼の姿がある
俺が育ててる子供だから喰うことは無いのだが、いつしか大きくなった身体と、自分達とは違う容姿に近付くものはいない
その二本鋭い牙は三十㎝以上あり、肉球に隠れてても見える爪は長く鋭い
肉厚のある身体は簡単には歯が立たないだろう
そんなルークを襲うものも、一緒に遊ぶものすらいない
辺りが開けた草花が咲いてる広場へと出て、横たわればルークは近付き額へと頭突きをし顔を擦り寄せてくる
何故違うのか、何故怖がるのか、そんな問いを前にフェンレーにしたことがあった
彼は自身の立場がそうであるから、みたいなことを言っていたがこいつは違う……
全く理由が分からないからこそ疑問を抱き、不安になるのだろう
俺は聞いてしまった側だからこそ、上手く返す言葉が見付からない
『 違っても、俺の子に変わりない 』
「 パパ、ずっといっしょ……? 」
『 あぁ 』
フェンレーがどんなことがあっても、好いてくれるように…俺もルークを嫌うことはない
ふっと、思う……
ファルクが死ぬまで一緒にいられるが、もし居なくなって人間界を去ればコイツは誰の元で何処に行くのだろうか
探すのが間に合わないそうに無いが、それは大事なことなんじゃないか
俺の身体に体重を掛け、横たわるルークに軽く避けては腹を見せ寝転がれば、コイツはまた身体を起こし頭を乗せようとする
重いんだと怒りたくとも図体はデカいだけで中身はまだ子供のまま
遊びたい盛りだろうけど、俺は猫同士の遊び方を知らない
そう思う度にフィンレーは良く俺に付き合ってくれたなって思う
『( 会ったらもう少し大人しくなろ )」
暖かな日差しに眠くなり、横たわる俺に
ルークもまた凭れたまま眠りにつく
こいつが来てから一番疲れるのは子育て疲れだろう
それとも……そう考えてる内に夢の中へと入った
" 聖獣召喚 "
『 ん? 』
気持ち良く眠っていれば、聞こえてきた魔法の言葉と、直ぐに光る足元の魔法陣に、半分眠っていたままの脳内は戦闘体勢へと変わるまでに時間がかかる
『 ふぁー。ファルク、なんだ? 』
「 お昼寝中に悪いが、敵だよ 」
大きな欠伸をした後に、ファルクから彼が見てる方へと視線を戻せば
其処には黒髪の少年は不気味な程に手足に鎖を巻き付け、この世界では見たことない黒のボンデージの衣装を着た露出狂
下半身に巻いてるベルトに締め付けられた陰茎は隠れてるとは言えど、痛そうだ
乳首やら臍にあるピアスの数に、ドMなのかと疑いながら戦闘体勢になるべく冷気を放ち氷の鎧を纏う
「 やぁ、ウォセカムイ帝国の銀狼族の皆さん。このボクの玩具を返して貰おうか? 」
『( 玩具? )』
「 誰か知らないが、立ち去ることをオススメするよ 」
吠えた銀狼の声に集まり、俺達の周りには近衛へとなった、銀狼兵達が揃い
ドMの格好をした、声は少年らしい敵へと睨む
俺達が居るのは街の中心にある、中央広場
何故ここまで、こんな目立つ奴が入ってきてもファルク以外は気付かなかったのか
鼻に頼る彼等を誤魔化す程に、この少年には"匂い"がないからだ
「 そうはいかないなぁ~。あれはとても″美しく″上手く出来たんだっ! 」
「「 !!? 」」
少年を囲うように三ヶ所から現れた紫色の魔法陣の中から現れたのは、魔獣と呼べるか分からないほど身体の一部が別の生き物になってるもの
その姿に、ファルクは小さく呟いた
「 あれは、キマイラだ 」
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