きちんと治療はうけますよ

3/35
前へ
/292ページ
次へ
……つらいと言ってしまいたい…… ……もう、辛くないフリをするのは………… 心も体も限界だった。 「…………あの……、腕が痛くて、頭がフラフラして、気持ち悪くて、ゾクゾクして……寒いの……」 気がつくと、あたしは汐崎さんへ正直に体調のことを口にしていた。 「……ちゃんと言えましたね。辛かったでしょう?」 …!? なぜだか、目の奥が熱い……。 目の前の汐崎さんは、あたしの頭へ手を伸ばし、よしよしと撫でながら、優しい笑みを浮かべる。 ……もちろん現在進行形で身体はすこぶる調子悪い。 でも……なんだろう……? この、心が温かくなる感じはなんだろう? あたしを心配してくれる人なんて、今までいなかった。 あたしを心配したり、気にかけてくれるのは、いつも動物だけ。 病気をしても、怪我をしても、誰かに傷つけられても。 最終的にはいつも一人でなんとかするしかなかった。 頭を撫でてくれるこの温かい手…… この手に頼ってしまいたいと思ってしまうのは、体が弱ってるせいか…、心が弱っているせいか…。 「………カナコさん…。」 気づかうような、優しい声。 「いっ、泉さん!?大丈夫!?泣いちゃうくらい辛い?」 始終おろおろとしている池内くん。 「……泣いてる?泣いてなんて……」 痛くない方の手を顔に持っていくと、生温かい液体が手に触れた。 ……泣いてる…… なんで……? 手についた透明な涙を、呆然と見てしまう。 汐崎さんはあたしからそっと離れ、部屋の中央にあるテーブルの丸イスを手にする。 そして戻ってくると、ベッドの横へイスを置き、そこへ腰を下ろした。 先程よりも近い目線。 「カナコさんが落ち着くまで側にいますから。……落ち着いたら病院へ行きましょう。」 そう言って汐崎さんは、裏表のない優しい笑みを浮かべた。
/292ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1296人が本棚に入れています
本棚に追加