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……つらいと言ってしまいたい……
……もう、辛くないフリをするのは…………
心も体も限界だった。
「…………あの……、腕が痛くて、頭がフラフラして、気持ち悪くて、ゾクゾクして……寒いの……」
気がつくと、あたしは汐崎さんへ正直に体調のことを口にしていた。
「……ちゃんと言えましたね。辛かったでしょう?」
…!?
なぜだか、目の奥が熱い……。
目の前の汐崎さんは、あたしの頭へ手を伸ばし、よしよしと撫でながら、優しい笑みを浮かべる。
……もちろん現在進行形で身体はすこぶる調子悪い。
でも……なんだろう……?
この、心が温かくなる感じはなんだろう?
あたしを心配してくれる人なんて、今までいなかった。
あたしを心配したり、気にかけてくれるのは、いつも動物だけ。
病気をしても、怪我をしても、誰かに傷つけられても。
最終的にはいつも一人でなんとかするしかなかった。
頭を撫でてくれるこの温かい手……
この手に頼ってしまいたいと思ってしまうのは、体が弱ってるせいか…、心が弱っているせいか…。
「………カナコさん…。」
気づかうような、優しい声。
「いっ、泉さん!?大丈夫!?泣いちゃうくらい辛い?」
始終おろおろとしている池内くん。
「……泣いてる?泣いてなんて……」
痛くない方の手を顔に持っていくと、生温かい液体が手に触れた。
……泣いてる……
なんで……?
手についた透明な涙を、呆然と見てしまう。
汐崎さんはあたしからそっと離れ、部屋の中央にあるテーブルの丸イスを手にする。
そして戻ってくると、ベッドの横へイスを置き、そこへ腰を下ろした。
先程よりも近い目線。
「カナコさんが落ち着くまで側にいますから。……落ち着いたら病院へ行きましょう。」
そう言って汐崎さんは、裏表のない優しい笑みを浮かべた。
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