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……あ。
汐崎さんの笑顔で……言葉で、涙の理由が驚く程ストンと心に落ちてきた。
あたし、普通に心配してもらえて、優しくされたのがうれしかったんだ……。
それこそ、泣いてしまうぐらいに。
「…………おっ、オレ、リキくんの様子みてきます。」
わたわたしながらも、さっと部屋からいなくなってしまった池内くん。
さすがにあたしが体調が悪くとも、明らかにあたしと汐崎さんに気を遣っていなくなったのが丸わかり。
……気を遣われるような間柄じゃないのに……
それとも、あたしが泣いているから、どうしていいのかわからなくて逃げた?
「池内くんに気を遣われるなんて。僕もまだまだですね。」
楽しげにふわりと表情を崩した汐崎さん。
……また胸の奥がじわりと温かくなる。
そう思うのと同時に、寒気とめまいがくらりと襲ってきた。
「………ちょっと……横になります。」
体を起こしておくことが辛い。
あたしは一旦仰向けに体を横たえるが、寒気が強く、体を抱きしめ丸くなるよう姿勢を変えた。
その間も、しゃくりあげることはないにせよ、涙はボロボロと目から流れ落ちている。
……どこからこんなに出てくるのよ……
止まってくれない涙に、どうしていいのかわからない。
声もなく静かに涙するあたしに、汐崎さんはまるで紳士のように、ズボンのポケットからハンカチを取り出し、それを使い優しく押し当てるようにあたしの涙を拭いてくれる。
「……カナコさん、この涙は何の涙ですか?……もちろん言いたくなければ言わなくていいですよ。」
そう言う汐崎さんの表情は、あたしを心配しているような……気遣ってくれているような表情。
心配して優しくしてもらえるのがうれしいだなんて……弱みを見せるみたいで言いにくい。
あたしは戸惑いつつ、汐崎さんから目をそらせた。
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