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……しかし、熱が高いせいか、浅いくて早い呼吸ばかり。
……しんどい……痛い……気持ち悪い……頭痛い……寒い……
体調不良のバーゲンセールでもあたしはしてるのだろうか?
「……涙、なかなか止まりませんね。」
優しい声。
きっと表情も優しい顔をしてるんだろうな。
「……そのうち止まるわよ……」
力なく、ポツリと答えるあたし。
涙も無限に流れるわけじゃない。
早く止まって欲しい。
こんな情けない姿を見られたくないから……
でも、止まってほしくない。
涙が止まったら、この優しい手は離れてしまうから……
……あたし、どうしちゃったんだろ……
あたしらしくない。
いつものあたしなら、気丈に何もないフリして、涙なんて絶対人に見せない。
……すべては体調が悪いせい。
……そういうことにしておこう。
だから……
だからもう少しだけ。
この手に触れてもらっていたい。
優しく涙を拭いて、頭を撫でてもらいたい。
汐崎さんの優しさに甘えていたい。
寒気と気持ち悪さの中、体が限界だったのか、ぼうっとまどろみが訪れた。
「カナコさん?眠ったんですか?」
優しくて穏やかな汐崎さんの声。
……この声も好きかも……
汐崎さんの問いかけに、『眠ってません』と返答しようとしたが、思ったように口が動かない。
…いや、正確には動かないのではなく、動かしたくなかった。
しんどいから、口だけじゃなく、手も足も目も動かしたくない。
純粋に休みたかった。
……まあ、いいや。
無理に返事しなくたって。
このままもう少しだけ………
あたしは静かにまどろみに身を委ね、抵抗することなく、すーっと眠りについたのだった。
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