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「目が覚めたのね。気分はどう?腕の痛みは?」
まるで長年仲良くした友人に話しかけるような気さくな感じで、その人は口を開いた。
「えっと…、……気分は悪くないです…。痛みも今は大丈夫…。」
戸惑いながらも、あたしは質問されたことに言葉を返す。
「食欲はある?のどは渇いた?」
「…あまり食べたくはないです。のどは……渇いてます。」
……何なの?
この人は何者?
「経過はまずまずってとこかしら。……ほら、そんなとこに立ってないで、こっち来て座りなさいよ。」
屈託のない笑みを浮かべ、勝気そうな女の人は、空いている自分の隣のイスをぽんぽんと叩いた。
何がなんだかわからないけれど、相手はあたしの状況はある程度把握してるみたい。
おずおずと彼女の隣のダイニングチェアーに腰かけると、唐突におでこに手を置かれた。
「っ!?」
驚きに固まっているあたしに対し、「まだ熱はありそうね。薬が効いてるから、今は楽なのかしら。」と少し考える様子を見せつつ、すっと手を離す女の人。
……ちょっと待って?
さっきからこの状況でわけわかんないのに、薬ってどういうこと?
この人、何なの?
「ちょっと待ってて。」
そう言ってテーブルから離れてゆく女の人。
壁の向こう側へ消えてゆく。
何かを開け閉めする音の後、ペットボトルを二本手にして戻ってきた。
どうやら、壁の向こうはキッチンみたい。
「はい。普通のミネラルウォーターだけど、飲んでちょうだい。」
あたしの目の前に一本ミネラルウォーターを置いた後、あと一本はすぐさま開封し、立ったまま口をつける女の人。
「……あの…、失礼ですが、あなたはどなたでしょうか?」
ここであたしは、やっと気になっていることを一つ質問した。
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