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この場所のことに、このあたしの格好、腕の包帯、彼女の『薬が効いてる』発言……。
聞きたいことは山ほどある。
「ああ。そうよね。あなたにとっては、きっとはじめましてですもんね。」
…ん?
あなたにとって?
あたしとこの勝気そうな女の方とは、初対面じゃないの?
すとんと腰をおろし、彼女は口を開いた。
「私は桜。ちょいちょいパーティーで、一方的に顔は知ってるわ。泉カナコお嬢様。」
屈託なくニコリと笑う彼女……桜さん。
「……えっ…?」
あたしのことを知ってる?
……更に疑問が増えてしまった。
ちょいちょいパーティーに参加しているということは、この人もそれなりにセレブなお家か、バリバリの実業家か……。
「……桜さん……とお呼びしたのでいいかしら?」
あたしはとっさにお嬢様の皮を被った。
この人がどのような人であれ、泉財閥の評判を落としてはいけないから。
「なんでもいいわよ。好きに呼んでちょうだい。」
笑顔のまま桜さんは、手にしたままのミネラルウォーターをもうひとくち口にした。
「……わかんないことだらけでしょ?目が覚めたら知らない場所に、心当たりのないパジャマ着てて、極めつけが知らない人。気になることから教えるから、何でも質問してちょうだい。」
ペットボトルを机の上に置き、体ごとあたしに向き直る桜さん。
手始めに何を質問すればいいのか……。
そもそも、本当にこの人を信用して質問を投げかけてもいいのか…?
頭の中を色々な考えが錯綜するが、結局この人に話を聞く以外、今のあたしに疑問を解決する手段はない。
「……でしたら……、まず、ここはどこなのでしょうか?」
あたしは、所在確認からはじめることとした。
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