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……さて。
後はドレス返してもらって……さっさと帰ろう。
…………と、思ったけれど、さすがにさっさと帰るのは……ちょっと……アレよね…?
人間を嫌っているとはいえ、常識はあるつもり。
……それに、どうしてだろう……
………汐崎さんの顔が見たい。
……迷惑をかけただろうから、申し訳なくてそう思うのかな…?
なぜか無性に汐崎さんの顔が見たかった。
「カナコお嬢様、もう聞きたいことはないの?」
あたしからの問いかけがストップしたためか、桜さんからそんな言葉をかけられた。
「……そうですね……」
今までの情報を整理すると……
あたしが体調を崩し、動けなくなってしまった上、スタッフルームで寝てしまった。
何らかの手段で二階部分の汐崎さんの自宅に運ばれて、ベッドに寝かされた。
汐崎さんと何かしらの関係があると思われる桜さんに、汐崎さんがあたしのことを……怪我や体のこと含め相談したに違いない。
相談を受けた桜さんがわざわざ訪ねてくれて、あたしの身の回りのことと、医療的な処置をして……
今、現在に至る。
まぁ、こんなところだろう。
体はすごく楽になった。
彼女に対し、ありがとうという感謝の気持ちはあるが……
ふと、ここで疑問が一つ。
桜さんにとって、あたしに関わる事に、何のメリットがあるんだろう?
普通、人って損得で動くものでしょ?
桜さんにとってのメリットってなんだろう…?
「あの、一つだけ聞いてもいいですか?」
楽しそうにキラリと桜さんの目が光った。
「何でも聞いて!」
「着替えさせてくれたり、手当してくれたり…。どうしてそこまで?……桜さんにメリットなんてないですよね?」
あたしのまわりは損得で動く人ばかりだ。
親切なことや甘い言葉には、必ず裏がある。
他人なんて……身内も含めて信用なんてしちゃいけない。
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