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「……もしかして…。ちょっち待ってて。」
そう言うと桜さんは立ち上がり、部屋に置かれているシンプルな固定電話のところへ。
受話器を手にし、ぽちっとボタンを一個だけ押した。
登録してる短縮番号?
そのまま待つことしばし。
「もしもし、私。お嬢さん目を覚したわよ。今リビングで水飲んでる。……………ん、わかった。」
手短に話を済ませ、戻ってきてイスに腰かける桜さん。
「……たぶん、説明するより、こうするほうが早いと思ってね。」
ぱちんとウィンク。
キレイな顔して無邪気に笑う彼女は、同性のあたしから見ても、魅力的な人だと思う。
……さて、そんな桜さんはどこの誰へ連絡したんだろう?
あたしのそんな疑問は、すぐさま解消された。
桜さんが電話してほんの数分。
バタバタと足音が。
「思ってた以上に早いわねぇ。」
優しげにふわっと微笑をこぼし、桜さんはリビングの出入り口となっているドアへ目を向けた。
ばたんっ!と、勢いよく開いたドアの向こうには、水色白衣の汐崎さん。
難しそうな険しい顔をしていたのに、あたしと目が合った瞬間、安堵の表情となり、いつもの柔らかい笑みを浮かべた。
「カナコさん、体は大丈夫ですか?」
……あぁ。この声……
なんだかホッとする……。
汐崎さんは、足早にあたしと桜さんの側へとやってきた。
アーモンド型の目からの、優しい色をした眼差し。
……汐崎さんに心配させちゃったよね……
「すこし気怠いですけど、大丈夫です。」
あたしはそっと笑みを浮かべた。
「よかった…。安心しました。」
ほっとしている様子の汐崎さん。
「竜也、もう時間も時間だし、泊まってくから。いいでしょ?」
「ええ。姉さん、和室の場所わかりますか?」
「わかるわよ。お嬢さんが寝てる間にお宅探検したから。」
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