馬鹿みたいな僕ら

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◇◇◇ 「受かったあああぁ!」 「落ちた……」  二人で同時に封書を開き、瞬が隣で崩れ落ちた。 「嘘でしょ、落ちたの?」 「……そんな気はしてた」  自分で東京の大学を希望したくせに、見事に落ちているのだから救えない。対して私はといえば、頑張って勉強しまくって同じ東京の大学を受け、見事に合格したわけで。 「意味ないじゃん」 「行きたきゃ行けよ」 「一人で行ってどうすんのさ」  同じ学校に通いたかったから受けたのだ。瞬がいなければ行く意味なんてない。当初から二人で目指していた大学は、二人ともすでに合格している。だから、この合格通知は不要だ。 「よし、紙飛行機を作ろう」 「俺をなぐさめてくれないのか」  紙飛行機なんて、作るのは久しぶりだ。子供の頃に、瞬と一緒に作っていた記憶はあるけれど、折り方はあまり覚えていない。適当に折り、出来上がった飛行機を瞬めがけて飛ばした。おでこに突き刺さるように当たり、そこそこの勢いで怒られた。 「血が出てる気がする」 「出てないよ」 「心の涙が血となって」 「出てないよ」  東京の大学は記念受験。そう言っていたわりに、しっかりと落ち込んでいる。まぁまぁ、とふざけて頭を撫でれば、恨めし気に睨まれた。 「私が一緒なんだから、大学なんてどこだっていいじゃん」  なんちゃって、と続けるよりも前に、腕を掴まれて強く引かれた。 「そうだな」  そう言って機嫌のよい顔で笑う姿に、あの夏の暑さが蘇ってきた。遠回りして、何度も傷ついて、私たちはお互いに不器用すぎた。だけど、結果的にこうして幸せになれたのだから、馬鹿みたいな時間も、無駄じゃなかったのかもしれない。 終
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