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◇◇◇
幼馴染というものは厄介だ。小さな頃から一緒にいれば仲の良い友人関係になるのは当然で、それがいつの間にか恋心に変わったところで、気づくのはずっと後なのだ。
週末、瞬の家に来るのが恒例となっている。高三の夏とあれば受験勉強真っただ中で、一緒に勉強なんてしている場合ではないのも分かっているけれど、習慣づいたこの時間はそう簡単に変わることはなく、変わってほしくはなかった。
同じテーブルの上で、真剣にペンを走らせている顔を覗き見る。恋人同士でもないのに同い年の男の子の部屋にいるのは不自然だが、それを自然だと思わせてしまうのが幼馴染という関係性だ。
高校一年生の頃、初めて男子に告白して、振られて、直後に瞬と話して気づいた。あぁ、私が本当に好きなのはこの人だったんだ、と。その時にはもう遅くて、「また他にいい奴見つけろよ」と言われ、力なく頷くことしかできなかった。
振られたと嘘をつくたびに、瞬は当然のように一緒にいてくれる。私をなぐさめる彼はとても優しくて、とても残酷だ。お前のことなど全く意識していないのだと言われているようで、立ち直れなくなる。
「何?」
瞬の視線がノートから外れ、私を見る。ずっと見ていたことに気付いたのか、訝し気に眉を寄せている。
「なんでもない」
「ちゃんと勉強しろよ、落ちるぞ」
「自ら禁句を言うとは……」
「俺は受かるんだよ」
どこからその自信がくるのだろう。現に成績は優秀だからぐうの音も出ないのだけれど、謙遜すら見せないのはさすがだ。
ペンを握りしめ、気合いを入れた。落ちるわけにはいかない。せっかく、同じ大学を受けるのだから。私だけが落ちて離れ離れになったら笑えない。
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