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「相変わらず、お利口なクルマですねえ」  自分でドアを開け、伊沢は助手席に座る。 「科学は進歩しているのだよ、伊沢君」 「進歩や便利になることが、必ずしも良好な方向に進んでいるとは限りませんよ」  少し棘を含んだ言い方のように感じた。  自分に向けた言葉では無いと、栗林は知っている。 「抗えないものもあるのさ」  独白に近いニュアンスで、栗林は言っていた。 「まあ、今日はよし。飲んでても大丈夫な点は褒めときます」 「のんべえらしいご意見で結構」  お互いに軽口を叩きながら、栗林はセンターパネルに触れる。  車内のイルミネーションから、柔らかな緑色の明かりがはじけた。
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