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プロローグ
二〇二〇年。世界は未曽有の人災に見舞われた。発端は未知の感染症であった。
感染症自体は、最初の発症より四か月ほどで、有効な治療薬と治療法が確立され、犠牲を払いつつも収束に向かいつつあった。
だが一度人々に根付いた恐怖心を払うことは容易ではなかった。
傾いた経済は、更に深刻の色を濃くしていった。一時、日本国内の失業率は二五%を超え、街には失業者と、世を悲観した自死者が、共に並ぶほどであった。
経済と共に、警察機構も大きな打撃を受けた。
経済の崩壊により、強盗、窃盗、盗難も相次ぎ、下部警察署、交番での対応は限界を迎え、治安機構も完全に崩壊した。
感染症が発覚した当初、日本政府の対応は、鉄道、道路を封鎖し、都市間の人の往来を禁じた他国とは対照的に、明確なガイドラインもなく、外出の自粛を依頼する程度であった。
稚拙で拙速さと正確さに欠ける日本政府の対応は、世界各国の失笑を買ったのだが、真の災害は、その後の経済復興策であった。
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