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「冷えるようになってきたねえ」   暖簾を片手でかき分けながら、伊沢守(いざわまもる)は店から出てきて呟いた。傍の赤い提灯に照らされて、右半分だけ赤く染まっている。  彼の表情は若々しくエネルギーに溢れているが、整えられた頭髪は白髪と黒髪が混ざり、銀色に光って見えた。  足元は黒のサイドゴアブーツ。  グレンチェック柄でブラウンのスリーピーススーツ、薄いブルーのシャツと濃いブルーのタイを組み合わせている。高い身長も相まって、華やかで目を引く出で立ちだ。 右手でジャケットの内ポケットを探ると、タバコとライターを取り出した。 黒い箱を弾いてタバコを取り出すと口に咥え、真鍮のオイルライターで火を着けた。 ふぅ、と煙を吐き出しながら、街明かりで霞む夜空を見上げると、 「明日もいい天気でしょうかねぇ」 誰に言うでもなく言葉に出していた。
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