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目の前を二人の男が何やら話しながら通りすぎる。
先頭の男の顔には、金銀に安く光る球状のものや、輪っかになってるものが、いたるところに付いていた。
手の甲を怪我したらしい。仲間に卑屈な笑みを浮かべながら見せている。
「明日の天気も気になるかもしれんが、取り急ぎ、今の飲み代を払ってくれんか?」
遅れて店から出てきた栗林誠一郎が、呆れ顔で伊沢に近づき、言い放った。
栗林は伊沢よりも三つ年長なのだが、二人の会話を聞いた者は一様に、もう少し年が離れているように感じる。
服装も派手めで華やかな伊沢に対し、無地のワイシャツに紺のスラックス、ベージュのカーディガンと落ち着いているとも、地味とも言える服装だ。
艶がある黒髪は、耳元でキレイに整えてあり、銀縁のメガネが、彼の纏う知的な空気を熟成させているようだった。
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