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人もまばらになった夜の元町を並んで歩く。秋の風は心地よく頬をなぞった。
「そういえば・・・・・」思い付いたように、伊沢が口を開く。
「千尋ちゃん抜きで行ったら、マスター拗ねますよねぇ?」
うーん、と間をおいて
「ああそうだな。筋金入りのエロジジイだからな。誰かさんと一緒で」
と横目で栗林は伊沢を見る。
「まだ俺はジジイって呼ばれる歳じゃあないですけどね」
銀髪を指で整えながら伊沢が答えた。
「エロは否定しないのかよ」
「それを失くしたら、俺は俺じゃなくなりますよ」
伊沢は力強く、親指を立てて拳を握った。やや間があって、
「ああ、そうかいそうかい」
聞くまでもなかった、と栗林は後悔しつつ、ため息にも似た吐息を吐いた。
一方の伊沢は満天の星空のような、清々しい顔をしている。
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