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家に帰ってから約束どおり兄と二人でラムネを開けた。
穴の空いたプラスチックをビー玉の上にセットした兄が「ここに手を置いて」と私を促す。
「これなぁに?」
「これで開けるんだよ」
両手を瓶の口に持っていった私の手を包み込むように、大きな兄の手が重ねられた。
優しくかけられた力を受けて、私は自分でもグッと手のひらを押し出した。
ぽこん、と手の中で押し込まれる感覚。
カラン、とビー玉がガラスに当たる音。
シュワシュワと音を立てて泡が上ってくる。
なんだか怖くなって私は思わず手を引っ込めそうになった。
そんな私を後ろから手を回していた兄の体が支え、優しい声で言った。
「手を離さないで」
「でも怖い」
「大丈夫。一緒に押さえててあげるから」
「……うん」
「大丈夫。そうしたら溢れることはないから」
兄の言葉通り、しばらくするとこちらへと向かってきていた泡は勢いをなくして静かになった。
「はい、飲んでいいよ」
真っ白なタオルで私の手を拭いてから、兄はその青い口を私に向ける。
コロンとビー玉の転がる音とパチパチと小さく炭酸の弾ける音が重なって、私はドキドキしながら口をつけた。
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