悩みの夏は小さな謎とともに

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 今年も、いつもの夏休みになるはずだった。なんの変哲もない夏休みの一コマ。そうなるはずだった。  そう、いつものようにお盆前に叔父たちの家に行き、そこでのんびりと過ごす。農作業を手伝ったり叔母の作った料理を堪能したりして、従兄とあれこれくだらないことを喋る。たまに進路を相談してみる。ただそれだけのはずだった。  それがまさか、あんな予想外なことに巻き込まれようとは、至って普通の高校生である蓮井悠人には想像もできないことだった。  しかし、人生なんてそんなものかもしれないと、安易に巻き込まれることを許容した自分を思えば、それもまた面白エピソードの一つでしかないのかもしれない。別に犯罪に巻き込まれたわけではないのだ。言うならばご近所トラブル。いや、トラブルですらないのだが、しかし、そう簡単にはないような不思議なことだった。  でも、それは自分の悩んでいた進路を後押ししてくれるような、いい体験だった。これだけは確かだ。あの一週間は、普通の高校生活では関係ないことを、悠人にあれこれと考えさせる体験だったのだから。
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