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廊下のひんやりした空気を堪能していたら、沙希がスイカを持って現れた。悠人は恥ずかしくなって、慌てて廊下を進む。南側の大きな部屋が客間として使われていて、小さい頃は両親とその部屋で川の字で寝たものだ。今回は一人だから、八畳もある部屋を独り占めできてしまう。
「ううん。広すぎて困る感じ」
部屋の隅にカバンを置いて見渡すと、ちゃぶ台だけが置かれた部屋は非常に広く感じた。すぐそこに見える庭や畑、さらに遠くに見える山々が、遠くに来たなという気分にさせた。しかし、同時に慣れた風景でもある。毎年のように一週間はここに滞在しているのだ。すぐに感覚を取り戻すだろう。
「悠人君。早く。スイカがぬるくなっちゃうわよ」
「はい」
ぼんやりと廊下から外を見ているのが解ったのだろう、沙希が茶の間から声を掛けてくる。茶の間は客間とふすまを隔ててすぐだから、ちょっと開ければ見えてしまうのだ。これもまた、普段はマンション暮らしの悠人には驚かされるポイントでもある。プライベートがあるようでない。昔は当たり前だったのだろうが、なんだかどきどきしてしまう。
「高校生になったからかな」
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