21人が本棚に入れています
本棚に追加
理由を問い質したらそう説明されたとのことだった。何の実験なのかと問えば、人工知能だと言っていたが、いやはや、昔から秀才の従兄らしい研究だなと感心してしまう。まさに最前線の研究。彼にぴったりだ。
「ああ、理系で秀才。同じ理系とはいえ脳みそは雲泥の差なんだよなあ。相談しても無駄なのかな。もう一層のこと文転しようかな。でも駄目か。国語が……国語が出来ないんだよ。古文だけでなく現代文も駄目だからなあ。はあ」
これもまた、英単語が頭に入って来ない理由だろう。要するに、進路で思い切り悩んでいる最中なのだ。志望大学は一応ここかなと決めているものの、そこには到底足りない偏差値。これもまた、悩みを深くする理由だ。
そんな悩みとは関係なく、長閑な田園風景が車窓を流れていく。もうすぐ終点だ。悠人はほとんど頭に入らなかった単語帳を閉じると、荷物をまとめ始める。単語帳をボストンバックに突っ込み、窓辺に置いていたペットボトルを回収する。
終点の駅は有名な神社の最寄り駅とあって、観光客も多い。それも夏休みの真っ最中だから、尚更多かった。わざわざ暑い日に参拝しなくてもと、何度も訪れている悠人は思うのだが、このタイミングしかない人もいるかと思い直す。
最初のコメントを投稿しよう!