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人混みに流されて、まだ電化されていない、今では珍しくなった人が立っている改札を抜けると、叔父の新井信明が手を振っていた。日焼けした顔に満面の笑みを浮かべている。
「おおい、こっちだ。悠人」
「こんにちは、叔父さん」
ぺこりと頭を下げると、その頭をわしわしと撫でられる。小さい子どもではないのだから勘弁してほしかった。しかも多くの観光客が横を通り過ぎているというのに。恥ずかしい思いに耐えられなくなってきたところで
「ちょっと、叔父さん。もう小さい子どもじゃないんですから」
と抗議しておいた。
「ああ、悪いな。子どもを見ると、つい癖でやっちゃうんだよ。それにしても、また大きくなったか」
「そうですね。去年より五センチは伸びました。今、百七十二センチですね」
「でかいなあ」
信明はそう言って、しみじみと悠人の全身を眺める。その信明は百六十五センチくらいだから、まあ、大きく見えるだろう。昔は大きな人だなと思っていたのに、今ではちょっと視線を下げて喋る立場になってしまっている。
「和臣さんの方が大きいでしょうに」
しかし、従兄の和臣はその上を行く百八十センチだ。それから比べたら、まだまだ小さいと思うのだが、叔父からしたら見上げる大きさになれば大きいということか。
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