悩みの夏は小さな謎とともに

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 しかし、採れすぎると廃棄されるはずではと、先ほどのスイカを割った思い出がよみがえり心配になる。すると、夏野菜は信明の母が漬物にして家で消費しているのだと教えてくれた。しかも一部は道の駅でも販売していて、これがなかなか好評なのだという。なるほど、その手があったかと、悠人は素直に驚いた。 「とはいえ、それでも追い付かないくらいに量が多いからな。漬物と野菜、よかったら持って帰ってくれ。スイカは重いから後で送っておくよ」 「はい、ありがとうございます」  そのくらいはお安い御用と、悠人は頷いた。信明の作る野菜は両親も大好きなので、今年は漬物もあると知れば喜ぶだろう。 ああ、普段とは違う風景に、都会ではまずしない会話。これが悠人のお盆前のいつもの光景だ。そんな普段との違いでようやく、日々の悩みもちょっと吹き飛ぶ。  しばらく国道を走って行き、十五分ほどで叔父の家に到着した。その家は大正時代に建てられたものだそうで、とても古風だ。全体的に木がふんだんで、そして瓦屋根。最近では見かけない、ちょっと耐震性能は不安があるものの、昔ながらの平屋建ての日本家屋だった。 「あら、いらっしゃい」
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