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軽トラックが庭に止まると、叔母の新井沙希が廊下から顔を覗かせた。エプロンをしていることから、台所で何かしていたようだ。そんな沙希は、甥っ子の悠人から見ても美人だなと思う人で、母の弥生も羨ましがる美肌の持ち主だった。農家なのに日焼けしていないのは、手入れのたまものであるとか。
「お世話になります」
「いいのよ。さ、早く上がって。丁度今、冷やしていたスイカを切ってたの」
「ははっ」
早速かと思いつつ、悠人は大きなボストンバックを肩にかけると玄関に回った。信明はそのまま軽トラックで田んぼの確認に行くという。悠人が降りるとすぐに出て行ってしまった。
「涼しい」
玄関は東側にあり、この時間は少しひんやりとしている。土間になっているそこから上がると、すぐに右手が台所だ。左手を少し進んだところに和臣が使っている部屋があるが、そちらは今は当然ながら無人で、とても静かだ。
いや、家全体がどこか静かで、そしてひんやりしている。冷房を効かせているわけではないのに、不思議なことだ。昔ながらの知恵が詰まっているからか。冬は寒そうだが、夏はとても快適だ。
「いつもの部屋を使ってね」
「あっ、はい」
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