長い商店街

1/62
前へ
/65ページ
次へ
5fc33fa5-6265-40d7-85a6-6372d021e5f9  夕暮れの赤い太陽の光線が皮膚に突き刺さる。けだるい晩夏の午後6時、周囲には焦燥と倦怠の重苦しい空気が充満していた。  鬼崎龍昇(きざきりゅうしょう)は鉛のような脚をひきずりながら、新宿の街はずれをとぼとぼと歩いていた。 「……今日も一日、俺は無力だった」  胡乱のまま、ひとり呟く鬼崎は自らを嘲笑するかのように口許を緩めた。汗まみれの白いTシャツが皮膚にはりつく。首筋を流れる汗に不快感が募る。涼を求めようにも、人が大勢いるところは避けたい。鬼崎は少し背中を丸めながら、人気のない方を目指して、緩慢に歩を進めていた。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

279人が本棚に入れています
本棚に追加