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夕暮れの赤い太陽の光線が皮膚に突き刺さる。けだるい晩夏の午後6時、周囲には焦燥と倦怠の重苦しい空気が充満していた。
鬼崎龍昇は鉛のような脚をひきずりながら、新宿の街はずれをとぼとぼと歩いていた。
「……今日も一日、俺は無力だった」
胡乱のまま、ひとり呟く鬼崎は自らを嘲笑するかのように口許を緩めた。汗まみれの白いTシャツが皮膚にはりつく。首筋を流れる汗に不快感が募る。涼を求めようにも、人が大勢いるところは避けたい。鬼崎は少し背中を丸めながら、人気のない方を目指して、緩慢に歩を進めていた。
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