絵日記に書けない

2/8
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 夏休みの絵日記というのは、夏にしかできない体験をして、それがいかに楽しく、自分を成長させたかを書かなくてはなりません。 「動物園に行ったけどどの動物も暑さでバテていて皆寝ていました。つまらなかったです」とか、「夏祭りのくじの一等は存在していない気がするのでやりませんでした」なんて、本当のことを書いては行けないのです。  私は、動物園と夏祭りがとても楽しかったかのように、事実を大幅に変更して絵日記を書きました。  想像力を駆使したので、とても疲れた私は、休憩にアイスを食べようと思いました。  アイスは一日一個で、宿題や勉強が終わってからというのがお母さんとの約束です。  しかし、今日お母さんは出掛けていて、家は私一人。約束を無視して冷凍庫を開けました。 「あれ?」  冷凍庫にアイスは一個もありませんでした。 「なーんだ……」  リビングに戻り、絵日記を書こうとしましたが、どうにも手がつきません。再びカーペットの上に大の字に伸びてしまいました。今はアイスが食べたいのです。ああ、アイスが食べたい……  そうだ、ないならいっそ買いに行こう。 「シロちゃんの駄菓子屋に行こう」  私はそうつぶやくと、家を飛び出しました。 「シロちゃんの駄菓子屋」とは、私の家から一番近くの駄菓子屋です。正式な店名は忘れました。「シロちゃん」と呼ばれている白い犬がいるので、そう呼んでいます。私の家からだと、コンビニよりその駄菓子屋の方が近いので、迷わずそこに向かいました。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!