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「まぁいいだろう」
ガチャ神は軽くうなづくと飯に塩をかけ、茶碗を持って箸で食べはじめた。
貧乏を極めたような食事風景に若干引いたが、当の本人がこれを希望したのだし、課金しすぎてすかんぴんな俺が贅沢な食事を用意出来るわけでもないので、深く考えないことにした。
「教養として教えておいてやると、神饌てのは朝に供えるのが望ましい」
「へぇ、そうなんスか」
「けどまぁお前はソシャゲのガチャに全財産突っ込むような馬鹿だから、多くは求めねぇよ。求めたところで無理だろうし」
「さすが神様、俺のことを分かっていらっしゃる!」
「よって神饌を用意する時間はいつでもよいとしてやる。でも絶対用意すること! ――けどお前の二推しのガチャが明日とのことだから、もう一回用意したらそれでおしまいだけどな」
「二回きりでサーセン」
ガチャ神と会話しつつスーツから部屋着に着替え、自分用の夕食を用意するために台所へ立つ。
「何を作るんだ?」
「何にしましょうかね?」
冷蔵庫を開けてメニューを考える。
俺は大学生の時から一人暮らしをしているので、家事は一通り出来る。
「そうだなー……。よし、夏野菜カレーにします! 多く作っておいたらアレンジで数食分確保出来ますし」
「ふーん。お前って貧乏な癖して、冷蔵庫の中身は詰まってんのな。課金しまくる前に買いだめしておいたのか?」
「いえ、数日前に母親が救援物資を送ってくれたんスよ。実家が兼業農家なんで、こういう時マジありがてーです」
今年春に就職した会社は入社後即、大学より更に実家から離れた土地へ俺を飛ばした。
だから俺は大学時代と同じくひとり暮らしをしており、お金の仕送りはなくなったものの、母親は時おり学生時代と同じように実家で採れた野菜や米を送ってくれる。
生活が困窮するほどソシャゲに金を使っているなど、親にはもちろん言っていないが、食料の仕送りにはとても助けられており、メチャクチャ感謝している。
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