五千兆円欲しい

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五千兆円欲しい

 諭吉を二桁課金(犠牲に)しても、推しの星五(SSR)カードはいまだ一枚も俺の手元へやって来ない。 「……星五(あいり)……」  夏イベント開催祝いとして運営から配られた十連分の無償石は、何の成果も出さずに一瞬で溶けた。  日焼けした(たたみ)の上には、結果を出さずにゴミとなったバナナチューンカードが何枚も散らばっている。  クレジットカードの利用限度額が上限にたっしてしまった。  貯金もほぼ崩してしまったから、明日からの生活がかなりヤバイ。 「あいりは俺のこと……そんなにも嫌いなのか?」  推しガチャ開始から既に一週間以上が経過している。  単発教、描いたら出る教、深夜×時教、推しの好物を触媒にする教、某botがボロンしたら引く教、トイレ我慢教――あらゆるガチャ宗教を試してみたが無意味だった。 「どうして……」  ひとりでは背負いきれない悲劇と惨劇の証拠――ガチャ爆死画像詰め合わせをSNSにアップすれば、フォロー外の見知らぬ奴から「私は無課金単発で出ました!」と、殺意しかわかない報告をされたので即ブロックした。 「……なんで」  同時ピックアップの限定星四(SR)はとうの昔に完凸済み。  恒常星五(SSR)が五枚、すり抜けで来た。  違うんだ、今欲しいのは君たちじゃない。ピックアップ仕事しろ。 「なんで! どうして!」  あいり(推し)が在籍しているソーシャルゲームのガチャには上限金額設定がない。  つまりいわゆる『天井』と呼ばれる救済措置がない、忌むべき最悪最低極悪ガチャなのだが、いまだに消費者庁コラボ(極刑)に処されていない。  よって何十万課金しようが出ない時は出ないという、悪夢のような現実が俺の身に起きている。 「どうして出ねぇんだよっ!!」  鬼畜ガチャと理解しているのに課金しまくっている俺は、愚か者以外の何者でもないと理解している。  けれど仕方がないのだ。だってそこに推しがいるから。  推しのガチャは出るまで引くしかないのだ。  何故ならそれが、俺からあいりへ出来る応援で愛だから。
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