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推しは複数います
「大丈夫か?」
「……まぁ何とか。血は出てないんですよね?」
「挿れる前に解したし、神様パワー使ったから怪我はしてねぇよ」
ロマンス皆無な初体験を終えた後、ガチャ神は立って身支度を整えながら、パンツだけはき直し背を丸めて座っている俺へ話しかけてきた。
「もうあんま無茶な課金すんじゃねぇぞ」
「ガチャの神様なのに、じゃぶじゃぶ課金しろって言わないんだ?」
「そりゃぁ破産されてガチャ引く奴がいなくなったら、オレの存在意義がなくなるからな。だから課金は、コンスタントかつ適度にしてくれるのが理想なんだよ」
「なるほど」
「じゃ、そろそろオレ行くわ」
ガチャ神は右手を軽く上げ、ひらひらと振る。
「どこへ?」
「お前みたいに爆死してる奴の救済に決まってんじゃん」
「お疲れ様です」
そう言った後、俺は二日後に控えている予定をはっと思い出し、座ったまま慌てて彼のマントを掴んだ。
「おう。――ん? どうした?」
俺は唾を飲み込み、おそるおそる彼を見上げる。
「二日後、またうちに来てくれませんか?」
「あぁ?」
「たぶん二日後に、夏イベ後半戦の第二弾水着ガチャがあるんです。そんでもってたぶんそれに、二推しのカオル子のSSRカードが出ると思うんです! ガチャ神様っ、カオル子を引いて下さいお願いします!!」
俺が長らくハマっている『シャイニー★ダンシングディーバ』というリズムゲームは月二回、イベントが開催される。
そして毎回、イベントを進める上で有利になるボーナスがつくカードが排出される、新規ガチャも用意される。
限定水着あいり排出のガチャは八月前半イベントに対応しているのだが、この後に控えている八月後半イベント用ガチャに、限定水着カオル子のカードが用意されているのでは? と俺は予想しているのだ。
「……あのなぁ、そういうのって不可なの。ラッキーてのは偶然で、依頼は受け付けてないの」
「お願いします!」
案の定ガチャ神は眉をしかめてつれない返事を寄越したが、俺はあきらめない。
「むーりー」
「そこを何とか! お願いしますよ、ガチャ神様ぁ!」
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