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俺は「へー」と相槌を打ちつつ、そんなにもうやまう気持ちを込めて用意したっけ? と疑問を持つ。
するとその感情が俺の表情に出たのか、彼は追加説明をしてくれた。
「お前は最初からオレの姿が見えるわ声も聞こえるわで、オレとかなり波長が合うみたいだから、お前からの気持ちはエネルギー変換率がよくて、美味く感じるんだと思う」
「その美味いって誉めてもらったカレーは、自分のために作ったんスけど?」
「そうだとしても、今日は普段より丁寧に作ってるんじゃないか? 何故ならオレがいるから。仮にオレがいなかったとした場合、お前は今日カレーを作っていたか?」
「うーん……どうでしょう?」
曖昧な返事をしたが、「神様がいるからあまり変なものは食べられないな」と外面を気にして、マトモな料理を作る選択をした節も実はある。
もしいつも通りひとりでの夕食なら、調理しない魚肉ソーセージを片手に持ちつつ卵かけご飯……というメニューだったかもしれない。
「まぁオレは満足出来る神饌をもらえればそれでいいし、お前は深く考えなくていいよ」
「はぁ」
「それに食材そのものの味を全然感じないってわけでもないしな。――さぁて、今日はこれにて営業終了!」
ガチャ神はそう言うと、座ったまま大きく伸びをした。
「昨日から今日にかけてすげー働いて疲れたから、オレもう寝るわ。布団敷いて」
「布団すか。……今俺が使ってるのしかないんスけど、それでもいいです?」
「いいよ」
となると俺は今夜、布団なしだな。でも今は夏だし、バスタオルでもかけて寝りゃいいか……と考えながら、最近干すのをサボっている布団を敷く。
「敷きましたよ。はい、どーぞ」
「うむ、ご苦労」
丁寧に敷かれた布団を見てガチャ神は偉そうにうなづき――金の蝶が彼の回りをひらひらと飛んだかと思うと、彼はまたまたビカー! と発光した。
「寝る時は猫になるんですね?」
反射的にまぶたを閉じた俺が再び目をあけた時、対面にいたはずの美男子は消え、かわりに緑の瞳の三毛猫が座布団の上にいた。
「お前が布団なしになるのは可哀想かなって」
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