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ガチャ神降臨*
「もしかしなくてもお前、オレが視えてる?」
年齢は俺より少し上くらいに見える、突然現れた謎の美形に外見を裏切らないイケボで訊かれたのだが、俺は現状に驚きすぎていて返事が出来なかった。
「視えてるぽいな。――オレの声も聴こえているか? 聴こえているならうなづいてみせろ」
指示されるまま俺は小さく二回、首を縦に振った。
すると俺様系ぽい雰囲気の男は白のロングブーツをはいた足を動かし、ちゃぶ台から下りた。
「ふぅん、珍しい。不敬な奴だ」
言葉とは裏腹に、男は愉快そうにニヤリと笑った。
「ど、どなたでいらっしゃいます……?」
「ソシャゲのガチャで爆死した、お前の救世主」
「は?」
「オレね、ガチャの神様なんだわ」
信じられなさすぎる回答に、俺は一瞬で目の前のコスプレ野郎に対して不信感を抱いた。
「……マジで?」
「ガチでマジ。オレってば最高レア、一発で絶対に引けちゃう神様ですよ」
「すげーですね」
「神だからな。崇めるがいい」
棒読みで誉めたのだが、不審者は一向に己がガチャの神であるというスタンスを崩さない。
ここまで堂々と言い切るなら信じてみようか? と、ガチャ大爆死で弱っている心に魔が差す。
「ということは……つまりあなた様は俺を救いに来てくれた……ということ?」
「そう」
自称『ガチャの神』はニッと口の端をつり上げる。
「あ――、ありがとうございます……?」
「うむ、全力で感謝してうやまうがよい」
「ははーっ!」
白軍服男が神である根拠は今のところ何もないが、『乗るしかない、このビッグウェーブに』と第六感が俺に告げたので、正座して額を畳へこすりつけた。
嘘でも本当でも、猫でも犬でも神様でも悪魔でも、とにかく限定SSR水着あいりのカードを引いてくれたらいいのだし、そのためなら信じるふりくらいいくらでもする。
「じゃぁさっそくお願いしたいんですが――」
「神饌は?」
「しんせん?」
「お供えとか、供物とか、そういうのはどこだ?」
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