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ガチャ神は捧げ物の提出を強要する、圧を隠さない笑みを整った顔へ浮かべた。
「ええっと……どういったものをご所望でしょう?」
かつてなく今貧乏な俺は、想定外のピンチに声が上ずる。
「んー。社会人男子なら、五千円以上の物かな。現金でもいい」
「この神様、さすがギャンブルなガチャを司るだけあってがめついぜ!」と、心の中で白旗を上げた。
願いを叶えるのに高額なお供えが必要なら、大爆死する前に来て欲しかった。
「……すいません。ガチャに金突っ込みすぎて、今手持ちがあんまなくて……」
「あらら、残念。じゃぁ駄目だな」
あきれたような小馬鹿にするような、そんな風に言われたものだから、俺の心に意地のようなものがわいた。
このチャンス、少々痛手を負ってでも絶対にモノにしてやる! と。
だから俺は素早く立ち上がって言う。
「今からコンビニ行って金おろしてくるんで待ってて下さい!」
口座残高はものすごく少ないが、あいりに狂いつつもリアル生活を考える理性がわずかながら残っていたため、五千円なら用意出来る。
「五分――は無理か。十分! 十分以内で戻ってきますから!」
いくら真夏とはいえ、パンツ一枚での外出は職務質問待ったなしと考え、俺は先ほど脱ぎ捨てたTシャツを右手で拾う。
「ちょっと待て」
左腕をガチャ神に掴まれ、何故か止められた。
彼の言動の意図がみじんも分からなかったので、俺は首をかしげて彼を見たのだが――彼は理由を言わず、俺の首元へ秀麗な顔を寄せてにおいをかいできた。
俺はわけが分からない彼の突然の行為にびっくりすると同時に、芸能人レベルの美形の急接近に同性ながらドキッとさせられた。
「お前、未通だな?」
風呂は確かにまだ入ってないですけど俺臭うほどクサイですか? その言葉ってどういう意味でしたっけ? と、ハテナマークを浮かべて「え?」と声をもらせば、解説された。
「童貞で処女だろ、って訊いてんの」
「なっ?!」
ぶわっと一気に血が頭部へ上り、顔が真っ赤になったことが自分でも分かった。
「においが未通だもん。オレって神様だからさ、そういうの分かるワケ」
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