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「ええと、それは……その……」
うまく回らない頭で必死に考える。
限界まで課金してしまった今の俺にとって五千円はとても大事だ。
後ろのはじめてと五千円を天秤にかけたら、五千円に即軍配が上がる。
ならば、多少痛い思いをしそうだが減るもんじゃないし、一回くらい経験しておいてもまぁいいんじゃないだろうか?
俺は男だから妊娠することはないし、話のネタにもなるし。いつどこで誰に話すのかは知らんけど。
俺を掘りたい奴はハイパーイケメンだし、それに神様とヤったなら、現在マントル層まで落ち込んでいる俺の運気も回復しそうじゃないか?
「――決めました。ケツを捧げます」
「よっしゃ。取引成立」
「けど! 先にガチャ回して推しを引いて下さい」
「あ?」
「ヤり逃げされたくないんで。あんたは確かに特別っぽいヒトだけど、本当にガチャ神様なのかはまだ八割くらいしか信じてない」
俺は賢くはないが、スーパーバカでもないと自負している。
男が本当に神かどうかは未確定のままだが、彼が普通の人間には出来ない方法で突然部屋に現れたことは事実だ。
ならば突然消えることだって可能に違いなくて、ヤり逃げされるおそれは十分あると考えられる。
よって俺の方がリスクが高い取引となるのだから、俺が先に対価を要求することは間違っていないと思う。
「……本当に不敬な奴だな、お前」
男は柳眉をひそめ、チッと舌打ちをした。
「ふん、まぁいい。オレが神だって証明してやんよ。特別に後払いを認めてやる。逃げんなよ?」
「逃げねぇですよ。推し引いてくれんなら、掘られるくらい安いもんだ」
にらむような鋭い目つきで威嚇するように言われたが、一歩も退かずに受けて立つ。
「よし。もし逃げたら、一生最高レア引けない呪いをかけるからな」
「お、おうよ」
「じゃぁお望みのものを引いてやるから、スマホ寄越せ」
「はい。ガチャ画面出すんで、ちょっと待ってて下さい」
スマホのスリープモードを解除し、ゲームのガチャ画面を確認すると、単発を数回引けるだけの石はまだ残っていたのでほっとする。
「お願いします」
「ウム」
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