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 それからも判で押したような毎日が繰り返されることひと月。  ついに士官学校入学式当日を迎えた。  天石(オルシャ)の月は、ソルの輝きが強まり始める頃――つまり暦の上では春だ。  ルフルルの多くの大陸や浮島にとっては、確かにそうなのだろう。  しかし、ラグナ大陸に陽光のほとんどを(さえぎ)られる常冬の地にあっては、まったく関係のないこと。  暖炉のある部屋を一歩出れば、たちまち凍りつくような冷気。  窓を開ければ、どこもかしこも雪と氷に閉ざされている。  人々の顔には笑顔や覇気はなく、どこかあきらめにも似た表情があるのみ。  この日も暗く寒く、外は粉雪が舞っていた。
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