インファナルヒーロー ～星色の死神が生まれるとき～

仇

　ーーそう言われたところで、にわかに信じられるものではない。
　自分の体に何か変化が起きたという実感もなければ、成長が阻(はば)まれているような窮屈さも感じなかったからである。
　ただ……フレイルフの思い通りにはなりたくなかったルルノイ。
　その日からはあまり得意ではなかったチーズやヨーグルトをすすんで食べ、夜は早めにベッドに入るなど、身長を伸ばすために効果がありそうな方法を試すようになる。
　この努力の結果がどうなったのかを知るには数年待たなければならないが、それはまた別の話である。

　ところでイルヴ家のーーつまり、フレイルフに人質に取られているルルノイの家族の安否はというと、いつでもどこでも確認できる段取りが整っていた。
　この屋敷に到着した翌日に渡された、あるセキュリティ会社のアカウントにIDとパスワードを打ち込むと、数か所に仕掛けられた監視カメラを通してイルヴ家屋敷の様子を見られる仕組みだったのである。