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ただし、表情は暗い。
上の妹ミゥイレーネはルルノイが家を出てすぐのころ、泣きわめいたりかんしゃくを起こしたりしていた。
今は落ち着いているが、今度はふさぎ込んでいるように見える。
下の妹リュノアールは、まだ幼すぎて置かれている状況をよくわかっていないのかもしれない。
しかし、変化は明らかだ。
彼女はまったく笑わなくなってしまった。
母は、思い詰めた表情をしている。
ルルノイがいて父もいて、家族が全員そろっていた頃には見せたことのない、暗く沈痛な面持ち。
イルヴ家は屋敷全体が、暗く思い緞帳に覆われでもしたかのようだった。
こうした様子を目にしたとて、今のルルノイにはどうすることもできない。
駆け寄って抱きしめる、言葉の限りに励ます……いずれも無理な相談だ。
一刻も早くフレイルフと交わした契約――戦争の集結という、天地をひっくり返すようなオーダーを実現させるのが唯一の希望である。
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