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マジ万字企画 【23年7月12日感想】」
さて、そろそろ万字も大詰めです。
個人的にはもう話す事が無く、あとは重複になるので〆る予定にしています。
ここ最近は数か月スパンとかになっていますが、最後なのでテンポよくやっていきたいです。
@一人一作の予定です。
特に希望がなければ、指摘とかはしない予定です。
基本、良い点だけ述べますが、忖度する可能性が大なので過信はしないでください(笑)
【1+はんぶんこ✕2】著:春野わか
https://estar.jp/novels/26031307
あぁ、BLだなー。って感じでした(笑)
まずは粗筋。(333Pまで読みました)
主人公の姫川青葉は、保育士として働いている。過去、ゲイである事を学校の教師に話したところ強姦未遂にあい、以降、男性不信に陥っている。
その後、出会い系サイトで出会う怜央にワンナイトを迫られ、トラウマで拒んでしまう。
最中、保育園に子供を預けるシングルファザーの亮輔の優しさに惹かれていく。
という感じです。今回のお題として、
①キャラは魅力的か?
②ヒーローよりも噛ませ犬が先に登場するのはありなのか?
③冒頭はどうか?
と、頂いております。これはまとめて後で話します。
その前に良い所です。
テンポが良かったです。
文が基本的に短文でまとめられていて「今、何やってるの?」みたいな場面がほぼ無かったので、凄く読みやすかったです。
一人称の場合、語るに落ちるって事態が多発するので、場面の説明がちゃんとできていて、このテンポで書けているのは凄く優秀です。
一人称って書きたい放題なので、ダラダラと進行してしまう場合が非常に多いです。ある程度の構成力や自制で話を前に進める必要があるので、テンポ良い一人称ができているのは、凄く良かったです。
あと、登場人物が少ない点も高評価です。やっぱり、登場人物は少ない方が良いです。
ベストは「3人」と言い続けていますが、何度でも言いたいです。ベストは3人!
因みに、3人の内訳は「そのシークエンスに登場するのが3人」って意味で、モブは含みません。
厳密には「主人公(確定)+ヒロイン(確定)+イベントキャラ(変動)」です。
本作は、まさにこの作りです。主人公とヒロインがいて、それを阻害するイベントキャラがいます。
これで20万字やれている時点で、理想的です。この文字数を3人でやれば、大抵の背景や心情も書き切れるはずですね。
今回333Pまで読み、まだヒロイン側が書き切れていないですが、主人側は良く書けていて好印象です。
体感ですが、10万字前後だと「全部描けるのは1人」なんですよね。勿論、それは主人公。
主人公以外のあと一人。まぁ、普通はヒロインが半分でも描ければ御の字、って感じでしょうか。
描写まで入れてガッツリやろうとすると、こういうペースになるはずです。
ちゃんと紙面を使っていたので、主人公、ヒロインの心境はしっかり理解できましたし、キャラクターも魅力的に動けていたと思います。
あと、地の文に直接的に「きゅん」とか書いてあるのも斬新に見えました。漫画背景の擬音とかではありますが、直で書かれると新鮮でした。本作のようなラブコメテイストだから仕えた技法で、千夜一夜ではできない方法でしょうが、作品毎に色々な方法が試されていたり、まったく作風を変える事ができる技量も素晴らしいですね。
今作はWEBやライト層を狙った作りになっていて、それをちゃんと考えてやっているんだろうなーって理解できたのが良かったです。
因みに、今回の↑の良かった点は、忖度無しです(笑) 率直に良いと思った部分です。
最も目を引いたのは、ジャンル(フォーマット)の使い分けができている点で評価が高かったです。かなり、玄人目線な評価ですが(笑)
では、お題について。
ちょっと長くなりますが、細かく見て行きます。
まず本作ですが、私、ヒロインが玲央だと思ってました……。ずーっと。
なので「亮輔の話、長くない?」って、ずーっと思って読んでいました。
なぜ、こうなったのか?
>>②ヒーローよりも噛ませ犬が先に登場するのはありなのか?
まさに、これ。
粗筋とか見ずに読み始めたのですが、今の感じで入ってしまうと、玲央は噛ませ犬じゃないんですよね……。ヒロインが登場すべき場面で登場している上に、キャラまでついているので、噛ませ犬にするのはかなり頭を使うはずです。
この理由について、冒頭の機能から順に説明します。
まず、冒頭というのは「物語のセットアップ」をする場面です。このセットアップには順序と優先順位があります。
特に↓
【冒頭に絶対に必須。無いと1次落ちする要素】
・主人公の提示。主人公のキャラクター紹介
・ヒロイン提示。ヒロインのキャラクター紹介
・目的提示。
・ストーリーへの没入(フック)
この四つ。
最悪の場合、ヒロイン提示は無くてもなんとかなります。なんとか……です。普通は入れます。
万字でも何度も言いましたが
「誰と、誰が、何をする話か?」
これは、本当に必須です。
絶対に必須です。何が何でも必須です。
これが無いとどうなるかというと、本作を読んでいた私のようになります。
↓超具体例
実は、玲央のキャラが凄く立っていて「このシングルお父さんの話はいいから、早く玲央出してよ」ってなってました。
てゆーのも、この玲央はチャラ男ですが、チャラ男がどんどん改心して、最後には一途に主人公を求める話かな? って、こちらが勝手に勘繰ったんです。
お父さんの方がまさかヒロインだと思っていないので、
「このシングルファザーイケメンから、チャラ男は主人公を取り戻すんだ。どんな話になるんだろ!」
って、勝手に期待しちゃいました。
途中で、「あれ、違うぞ……」って気づきましたが、全く腑には落ちていないです。玲央の方がキャラが立っていました。
って、なっちゃうんです。勿論、ならない人もいます。でも、私はなりました。
こういう部分を「感覚は人それぞれだから」としない方がいいです。
読者が勘違いしたのは、作者側が提示していないからです。
読者の読み違いについては基本、100%作者が悪いです(って、私は自身に言い聞かせています)
読者によって読み方は数多にあります。その読み方を指定する必要があります。
特に冒頭は、読者も神経を尖らせているので、ここで噛ませ犬を使うと、その人がヒロインである先入観が出てきてしまいます。
ましてや、本作はその噛ませ犬を主人公が「好き」と言ってしまっている状態で始まります。
主人公が冒頭で好きと言っている人は、ヒロインだ。(先入観1)
でもって、これがハゲデブの如何にも援助交際目当てのオッサンなら、読者も「これ、ちゃうわ」ってなりますが、イケメンのオラオラ系で、ちょっとした優しさもあるという如何にもヒロイン性質を持ったキャラです。(先入観2)
って先入観が生まれる読者の感覚は、至って普通だと思うので、もし噛ませ犬を優先的に出したいのであれば何等かの演出をする必要があります。
因みに、この「何等かの演出」は困難を極めるはずで、私は今思いつきません。相当に練り込んだ演出をしない限り、冒頭に主人公面で出てくるキャラを噛ませ犬にはできないので、めちゃくちゃ練り込んだ演出を考えてみて欲しいです。
私も何度か挑戦していますが、成功した試しは無いです(笑)
でも、これが成功すればかなり珍しいので一線級の作品になるはずです。
>①キャラは魅力的か?
↑のような構成面を除いても、玲央は魅力的でした。この軽率な男が改心していくストーリーってあまり他作品で思い出せなかったので、オリジナリティがあるなー、って勝手に感じてしました。(実際には違いましたが…)
それとは別にしても台詞が印象深いので、凄く良かったです。
あと、表紙などの挿絵についてですが、こういう絵がある場合、早急にこの絵に添ったキャラと状況を展開する必要がでてきます。
読者の感覚として、絵と文字のキャラを早く一致させたいものです。イメージがモヤモヤしてストレスになるので。
って事で、私はずーっと、表紙のグラサンの彼は、この玲央だと思っていました。(読者的に、キャラ整理はストレスなのでさっさとやってしまいたい)
こういう事態を回避したいから、一般文芸はキャラを表紙に使わないんですよね。
青葉については、良く作れていました。見た目も中身も行動も心理も全てが女性ですが、BLってそういうものだって勉強したので、私は問題なく読めました。勉強していない人は解釈に苦しむはずなので、BL界隈の外で出す時には、このキャラが男性である理由等もあると尚良いです。
十万字まるまる使ってほぼ一人の事を書いているので、説得力も十分にありました。
ゆっくり亮輔へ傾いていく様も、程よいペースと間隔で書かれていて好印象です。
こういう心の流れは速度調整が難しいのですが、おそらく作者意図通りに進んでいるはずで、その通りにこちらも読み取れているのがとても良かったです。
過去の事件の掘り下げが序盤にあると尚良かったかもしれないです。
★余談です。
昨今、LGBT法の可決もあって巷にはますます同性愛が増えています。脚本の賞なんかLGBT祭りです。
が、LGBTは「社会問題」であり、BLは「少女漫画の延長」であって、根本的な成り立ちが異なっているので、同性愛が流行っているからといって、BLのまま持って行かない方が良いと思っています。
ってゆーのも、私も懲りずにBL作品を書いて某賞で2次までいって、その時の落選評で一番多かったのが
「この子が男性である必要性が分からない」
です。
この受けの子、女性でいいじゃん? って意見……。
5人中3人に落選理由で上げられました(笑)
みなさんの言いたい事は分かります。
「それ言い出したら、BL終わりじゃね?」
ですよね。
思い出せば数年前、私も、BL初心者時に亜衣さんに直で訊きましたね、これ(笑)
私は万字で鍛えられたのでOKですが、世の中は未だこんなもんです。その辺りも踏まえつつ、一般文芸に穴を開けてみて欲しいです。
※本作とは関係ない余談話です。
(キャラの続き)
亮輔については、普通に良いキャラだと思います。こちらもページ数が裂かれていて、納得のいく人物像が作られています
只、ちょっと気になった点がいくつかあります。
一つは作者側で主役補正を掛けている部分が、いまいち強調されていない点。端的にイケメンと設定されているのですが、この設定が地の文や台詞で「この人はイケメンだ」と書いてあるだけで、行動としてのイケメンがもうちょい欲しかったです。
もしくは、「イケメン」という地の文での説明が多いので大幅カットして「イケメン行動をした場合のみ『イケメン』と説明する」など、緩急つけてみると印象がつくかもしれないです。ちょっと安易に「イケメン」ワードを使い過ぎている感がありました。
※ただ、このあたりは想定するターゲットにも関わってくるので、小中学生ターゲットなら、これくらい多様してもOKのはずです。
後、これは青葉についても言えますが、前半と後半でキャラがブレていたりします。
青葉については地の文です。前半はやけに会話調ですが、後半は普通の一人称の文体です。テンションに差があるように見えました。
亮輔は、前半はグイグイくるのに、後半は母親のようになってます。特にその切っ掛けとなるイベントも無く変わっているので、ブレているように見えました。
この辺りは仕上げの問題だと思うので、推敲の練度で統一性が出てくるはずです。
最後に、
・ストーリーへの没入(フック)
これだけ話しておきます。
「フック」は業界用語でよく使う言葉ですが、読者、視聴者にフックを掛けて引っ張り込む、って意味です。
冒頭には絶対に必須。
でもって、この「冒頭」とは、全ての章立てです。
物語の冒頭だけではありません。
「1」「2」とか皆様区切っていますが、必ず冒頭にはフックが掛かる何かが必要です。
もしフックを掛けれないなら、区切らない方が良いまであります。
全体的に各章がふわっと見えたのですが、冒頭のフックが緩いからかな? と感じました。
引き(各章の終わり)に関しては意識されていたので、閉まった感じがあって凄く良かったです。
さて、想定よりも長くなりました。
結局、指摘が多くなり申し訳ございません。
結論、「冒頭が大切」です。
各キャラクターは良く出来ていますし、各章のイベントもしっかり作られているので飽きずに読めました。
無料WEBなら全然問題は無い品質だと思います。
有料(書籍化)に向けて。
要求をワンランク上げるとするなら、何かしらこちらの予想を裏切って欲しいです。
女性向け小説(書籍化作品)も相当数読んでいますが、やっぱり何か誰かを裏切ろうとしている作品ばかりです。
分かり切った話の分かり切った内容だと限界があるので、どうしても個性は欲しくなります。
目に見えて分かる個性を作れる作家さんなので、トライするならここかなー? って思いました。
【春野わかさん総評】
ここからは、春野わかさん、全作品への総評です。
かなり個性的な作家さんですが、合理的な面もあって、きっと私の指摘なども全て分かった上でやっているのだろうなー、っていう印象がありました。
実力も問題なくプロで通用すると思います。
執筆ペースも早いですし。(重要)
努力家ですし(重要)
文章の拘りも強いですし、テーマへの踏み込みも深いです。(重要)
なんなら、現在プロであったとしても不思議じゃないです。
後は、どれだけオリジナリティが出るか? だと思います。
端的に「異世界」とか「悪役令嬢」とか、もっと言うと「BL」とか「歴史」とかもそうですが、フォーマットの決まったものの中でフォーマットに当てはまる事をしなくていいと思います。
こういうメジャーなフォーマットを、構造を分かった上で、かつ一度やってみた上で、その後、無視してオリジナリティを追求して欲しいです。
たぶんできます。
そこまで来れば、後は数撃て! なので、数書いて下さい。
最善の努力と、執筆量が確保できれば、プロは全然いけると思うので頑張ってみてください!
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