マジ万字企画 【23年8月18日】

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マジ万字企画 【23年8月18日】

ずれずれでスイマセン。今回はりんさんです。 今回、3作頂いています。 6万、3万、5千、って具合で、全部でざっと10万字です。 なので、一つずつ読んであげるつもりが、結局時間が無く、まとめてになりました。 初めにコメントも頂戴しており、その辺りも話していきます。何がおっしゃりたいかは、本編を読んで分かりました。 そこに対する意見も述べて行きます。 一本目 【箱庭硝子人形(はこにわグラスドール)~Glass Doll in Miniascape~】著:りん 様 https://estar.jp/novels/25823717 とりあえず、表紙絵がステキでした! アリサちゃんがちょっと首を傾げているのが可愛いですね。 と、水谷が言うてたと絵師さんにお伝えください(笑) では粗筋。 会社社長である真瀬は、友人の富豪が「人形ごっこ」をしていると知る。「人形ごっこ」とは、給仕の女に華麗な服を着せ、身動きさせず、人形としてその場にいさせる悪戯である。 見事な人体人形に心を動かされた真瀬は、あるカフェで一人の美女アリサを発見して思い立つ。 「この子を人形にしたい」と。 人形に選ばれたアリサと、真瀬の奇妙な社会生活が始まる。 まず、冒頭だけ言います。 完璧ですね。 すっごく良かったです。 この冒頭はだいぶ悩まれていたようで、「人形悪戯を初めに」という意見があり、そっちに修正してみたけど、やっぱり本作の「まずは主役が出会ってから」に戻した、とありました。 大正解です。 どっちもやってから選ぶべきです。冒頭を2、3案出すのは当然。 手垢がついているのは見て分かりましたし、ぞくぞくしました。 とても良い冒頭でした。強いて挙げれば、アリサちゃんが普通の十代女子の扱いだったので、もっと妖艶なり、美少女なり、テーマに沿った美しさを表現しても良かったと思います。(※1 後で話します) この先を話す前に、 ちょっと話をズラして重要な点を述べます。次の2作目にも関わります。 商用作品に必要なものって第一に「アイディア」なんです。 「何か、売れるもの作って」の依頼に対して、まず初めに考えるのは「アイディア」です。 本作でいうところの「人形悪戯」です。 富豪たちの間で行われる「美女を人形と見立てた悪戯」とか、アイディアとしては面白いです。 江戸川乱歩の世界観みたいで、ヒリついた人間の厭らしさやエロチシズムがあって、どんな展開にでもできそうなアイディアだと思いました。 私はここで構成の話ばかりしていますが、構成の直しなんかは他のスタッフさんでもできる分けで、結局はアイディアを出すのが作家の一番の仕事なんですね。(あと台詞) とにかく、まずはアイディアが必要。 アイディアとは、この作品を一文で友人に伝える場合に使われる「印象的な設定」です。 例えばです。 「美男子と美少年が愛し合う物語」と、友人に伝えたとしましょう。 それを聞いて、「それ読んでみたい!」って言われるか? この際、BLか否かは別にして、 「美男子と美少女が愛し合う物語」 と、言われて、「それ読みたい!」となるか? なりません! 「美男子と美少女の恋愛? そんなの、当たり前じゃん?」 5歳の子供にシナリオ書かせても、そんな話を書きますよ。 そんなので、金取れないです。 もっと奇抜なアイディアが出ないと、客が寄り付きません。 この万字で読んでいても、アイディアが足りていないと思う事が非常に多いです。 本作の場合、「人形悪戯」は良いアイディアだと思います。 ちょっと掘り下げると、人形悪戯は、実はけっこう定番アイディアです。乱歩、横溝あたりでありそうな設定で、自称:乱歩チルドレンの私もネタで持っていたりします。 でも、たぶんりんさんのネタとも十分に使えます。 他の人が使っているネタだからダメ、だと何もできなくなってしまうので、それを作家次第で色々な味付けにできそうで、目立つネタならアイディアとして利用価値があります。 人形悪戯はまさにその手のネタで、序盤のスリリングな展開も、実は私のネタとほぼ同じ入りなのですが(笑) 「こう書いたのかー」と思いつつ、スリリングだったのでアイディアとしての価値がありました。 今回、ここを掘ります。 さて、こうなってくると必ず出てくる意見で、 「アイディアないとアカンのか!」 ですね。 まぁ、本当はアカンのですが、そうじゃないやり方をする作家さんもいます。 はっきり言って、そっちの方がハードル高いので気軽に考えないで下さい。 ★新鮮な感性 これです。 「斬新なアイディア」か「新鮮な感性」か。 というか、両方ないと普通はコンテストを通りません。が、どっちらか特化でも通らない事もないです。 純文学とか、明らかに後者で、今パッと思いついた「TUGUMI(吉本ばなな氏)」などはこれですね。 ストーリー自体に大きなアイディアは無いですが、感性がびんびんです。あんなの私には書けません! ってお手上げされる感性が必要です。 感性派やろうと思うなら、あのレベルを目指さないと勝ち目ないです。ってくらい「新鮮な感性」は難しいです。 悪い事は言わないので、どちらかやろう! ではなく、どちらにもチャレンジしてくみてください。絶対に、そっちのほうが楽なので……。 で、本作に戻ります。 「人形を人間に見立てたい」は、かなり面白いです。 人にも話しやすいです。 「美女を金でやとって人形をしてもらう話」って、言いやすい。しかも、それで興味を持ってもらいやすい。 このアイディアだけで一次は通せるかもしれないです。 構成面でちょっと突きますね。 構成についてですが、こちらも問題なく三幕構成でした。 重複している部分とか色々あるので、もうちょい整えられると思いますが、そのエピソードで何をすべきなのか? の目的は前半は問題ないです。 とりあえず、前半、とくに一幕目は面白かったです。 で「人形悪戯を初めに出すか?」ですが、私は今の形で良いと思います。 クライシス(危機的状況)や印象的なシーンを冒頭に持ってくる、ってハリウッドで流行っているやり方もありますが、本作の内容ならば今の形でOK。 これが映画みたいな映像作品なら冒頭は人形悪戯かもしれないです。 只、小説の場合は絵が無いわけで、主人公が男か女かさえも分からないので、ちゃんと主要人物の紹介エピソードを入れる方が、結果的に急がば回れで良いのではないか? と最近、私は考えております。 コメントで頂いた通り、「主役二人が邂逅する」のが先決で、「人形悪戯」はその後大丈夫です。 勿論、「主役二人が邂逅する」が10ページも20ページもあるようでは、「人形悪戯を先に持って来て!」となりますが、本作のように1、2ページの話なら問題ないです。最適です。 せっかく邂逅したのでアリサちゃんをどうにか印象付けたいですが、これは、後半を見据えて推敲すると良いのではないでしょうか? というのも、乱歩チルドレンの私だと、これはもうサスペンスで押し切るんですね。実際に書いたものもガチガチのサスペンスです。 只、本作はそこから「恋愛」へと入っていきます。 ここは面白い部分ではありますが、面白くさせるのが難しい部分にも見えました。 実際に本作の内容を追うと、ほぼ「OL物」で、異様な環境にあるはずの社長とヒロインを、周囲は「社長のいつもの我儘」くらいの扱いにしてしまいます。 この切り替えなんです。 ここが私は非常に難しいと感じました。 異様な環境に周囲のOL達も慣れてしまっている、というのもよくある展開ですが、この場合ほぼホラーに展開するので、普通のOLになって恋愛していくと人形悪戯のアイディアが薄れているように感じました。 後、毎回同じ事ですいません、視点をころころ動かさない方が……。 というのも、「真瀬(主人公)視点」の時にはサスペンス調ですが、「アリサ視点」になると「OL恋愛物」になるんです。 でもって、アリサ視点の方が圧倒的に多くて、真瀬視点はほぼ序盤の人形悪戯関係の時と、後半の人形悪戯関係の時のみ。 ってなると、人形悪戯設定が取ってつけたようにも見えてきて、どこに重心を置いて読めばよかったのか判然としませんでした。 これは他の万次会でも度々述べていますが、色々と並べてあるのは良いのですが、これ! という点に絞らないとテーマも作風もブレてしまって、損をする可能性があります。 本作に関しては顕著にその感じが強くて、せっかく良いアイディアで良い入りをしているのに、それがオマケみたいな扱いに見えてきてしまうのが勿体ないと思いました。 普通はサスペンスやホラーに行く流れを、恋愛に持って行く! というアイディアは良いのですが、もうちょっと細部やサブプロットなどを含めてぎゅうぎゅうに練っていかないと「前半良かったけど、後半普通だった」と、私なら選評に書きそうだなと思いました。 ※1について 「冒頭のアリサちゃんの表現」ですが、この後半に合わせるべきかと。 あくまで私ならですが、恋愛物に寄せるなら、初めからアリサ視点から始めるかもしれないです。で、ずっとアリサ視点でやります。真瀬の人形悪戯シーンは「偶然覗いてしまった」とかで使います。 そんな感じで、後のプロットをしっかり作った上で、それにふさわしい表情をさせるべきだと思います。 ストーリーとは関係ないですが、文章が凄く上達していて感心しました。数年前とは別物ってくらいに上達されていて惚れ惚れします。 【Overflow】著:りん 様 https://estar.jp/novels/26051242 2作目。3万字くらいです。 「趣味」と強調されたので、趣味として見ていきます(笑) あらすじ 主人公の光が目覚めると、なぜかホテルで寝ていて、隣に憧れていた俊也が裸で寝ていた! 「趣味」と言われてしまうと、「では全てOKです」としか言えなくなります(笑) テレビ業界とか新聞、雑誌業界とかはWEBによって大ダメージを受けていますが、小説っていう消滅間近だった文化を救ったのは間違いなくWEBだと思っています。 趣味で小説をやってくれている人が増えて、本当にうれしいです。 なので、趣味ならなんでもOKです! っていうのが本音なので、詰め過ぎずに話します。 りんさんの言わんとする事は分かります。 コンテスト用とかになると、あれもやらないとこれもやらないと文字数削ってあれやこれや…… って感じで肩こりますよね。おまけに、私みたいなやつに「ちゃんと文章書けや! 構成したんか!」とか言われたら鼻血出ますわ(笑) なので、気楽に書くのも大切ですね。(本当にそう思っています) 内容的には、(ごめんなさい)よくWEBで見るBLって感じで楽しく読めました。 チクっと言うと、内容に捻りが無く展開がほぼ予想通りなのでどこかで裏切りたいところです。 もしくは、キャラをもうちょい詰めたい気がしました。(こっちの方が良いかな) 因みに、3万字というのは大体「1時間ドラマ」くらいの尺になります。 本作を1時間ドラマとして見直してみると、また別の感性が生まれてくる事があります。 というのも、ドラマなので配役が必要になるので「この子は、吉沢亮にして……」とか考えて読むと意外な話の転がし方やキャラ設定を思いついたりします。 本作に戻り、やはり何かしら引っ掛かりのあるキャラにしないとストーリーを進める原動力にならないので、何かしら練りたいなーという感じでした。 読めない話とか、そういうのではないです。普通に読めます。 【透明な墓標】著:りん様 https://estar.jp/novels/25855869 妄想コンの超短編です。 あらすじ 私の引き出しの奥に仕舞ってあるのは、一番の宝物。嫌いな友人を一家もろとも没落させた忌まわしいダイヤである。 妄想コンの優秀作品ですね。 主人公が嫌いな子を貶める、という話で、救いの無い話です。 えげつない……、とは思いませんでした。単に、救いが無い。 さてさて「救いの無い」が、果たしてどうか? でしょうか、聞きたい所は。 細かい演出面からいきます。 ショートショートでテーマが明快に作られているのは良いです。 只、少しやっておいて欲しい点で、「主人公はどういう子か」と「敵役の子はどういう子か」の掘り下げが、もう少し欲しいです。 妄想コンでもまだ文字数に余裕があるので、書けるはずです。 敵役の子が最終的には不幸のどん底に落ちる、って話ですが、この子があまり悪い子じゃないです。金持ち自慢するくらいで普通の子なので、もう一声欲しかったです。 加えて、主人公がどういう子かも不明だったので、一般大衆の面を被った悪意にしかなっていなかったです。(勿論、これが狙いならOKです) で、これは一先ず「妄想コンだから」という事で細部は終わります。 これを3万字くらい、できれば長編へ……となれば、妄想コンの意義が出てきますよね。それ(中長編)を前提に考えます。 やっぱり、「救い」をどうするかですね。 現状だと救いの無い話になるので、これで良いのかどうか……。 正直、分からないです(笑) いや、無理、分からない(笑) テレビドラマだと、「救い無し」は23時以降しか無理です。NHKだとそもそも無理です。小説だと?  今、パッと思いついた作品で「悪の経典(貴志祐介氏)」がありましたが、あそこまで書き切れるのかどうか? ですね。 今作のように5000字のショートショートで「救いの無い」話は書けますが、長編だとだいぶキツイですよー。私は無理だった。救っちゃった。。 徹頭徹尾、悪意を持った子供の一人称で面白かったです。この話だけでいえば面白かったです。 只、これを生かして中長編へ? となると、だいぶ練らないといけないので、ほぼ新作を書く程度の練り直し、というか、プロットから作る必要がありそうです。 これができる熱意があるかどうか? でしょうか。 できると思うかどうかは、作者とストーリーの相性次第となります。 とりあえず、プロットを作ってみては如何でしょうか? プロットは短文ですが、それだけで自身の得て不得手、ここまで書ける書けないは分かるので、便利なツールだと思います。 ※この書評は辞めますが、プロットでの相談は続けるつもりです。 【りんさん、まとめ】 りんさんとのお付き合いも長くなりました。たぶん、初めての書評の頃は書き始めだった? (と、勝手に思っています) 変わらない所が全く変わらなく、でも着実に歩みを進めている感じがします。 文章なんかは特にそうで、もう完全に明白に初めの頃より上手いです。 でも、構成はずっと変わらないです。 細かい変化やバリエーションはどんどん増えているのですが、根本は変らないです。 頑固。 自分のやりたい事しかやらない。余計なモノの切り方も、かなりバッサリいくので清々しいです。 私、ないし男性には受けそうな切り落とし方です。 が、反面で女性的な表現を求めている部分が多々あり、「趣味」と称されている作品を幾つか読みましたが、ド王道の恋愛物でした。 「こういう事を書くべきだ」の慄然とした作家性と、「こういうのを気楽に書きたい」の乙女的な本性が常に行き来してブレているのが、りんさんの作家性だと思っています。 この辺りが上手く調整できれば、頭が抜けるんだろうなー、って感じです。 実は、こうして最後の総まとめコメントを各人で考えていますが、りんさが一番難しいです。たぶん、頭良い人なんですよ。 「全部分かってるけど、ああ、どうしよ!」って感じが、凄い出ているんです。 なので、外から言いづらいです。 でも言っちゃいます(笑) 一個、歯車を調整できれば、「あ、なんだ、こんな簡単なことだったのか」ってなると思います。 そこまで、けっこうシンドイですけど、やってみて欲しいです。 「趣味」or「コンテスト用」で分けるのは全然ありですが、最終的には全部使った総力戦をしないと勝ち残れないので、そのイメージも持っておいて下さい。
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