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「マジ万字企画 特別編 お祝い書評」
【特別編】『流星の骸』 著:西乃鹿
https://estar.jp/novels/25676139
前回「純文学」編にてご参加頂きました、西乃鹿様!
「妄想コンテスト『星降る夜』に」にて「トンデモ賞」を受賞されました!
おめでとうございます!
入選のあかつきには、書評書かせてください! と公言していましたので、書かせて頂きます!(ご本人承諾済み)
こうして関わらせて頂きました作家様の受賞は、喜びも一入に大きいものがあり、筆にも力が入ります。他の参加者皆様も、入選、特集の際には書かせて頂けますと私のモチベーション向上にもなります!
というか、お祝いさせてください!(掲示を見落とすかもしれないので、自己申告頂けますと尚助かります 笑。 紅屋さん、樫村さんなど既に受賞、特集済みの方は、次作回以降という事で……)
では早速、書評させて頂きます。
まず目についたのが、「トンデモ賞」という謎の文字面と、あの短い選評にて「迫力」という言葉が三度も使用されているところ!
何が「トンデモ」なのかは後述するとして、「迫力」について。
本作の内容は、
「ユルデゥスの堕天」という伝承神話が受け継がれる古代アラビア。かつて、空から火焔を纏い大地へ降りる「ユルデゥス」を民は討ち取り、討伐した部族により、体や破片は価値のある装飾品や交易品として売られ、部族を潤した。二百年の時を経て、末裔部族達は再び「ユルデゥス」が降臨すると知る。
選評での「迫力」は、おそらくこの「堕天したユルデゥス」との対決シーンについての見解でしょうが、これを可能にする下準備を看過するわけにはいきません。
文章が上手すぎます!
伝記もしくは伝承のスタイルを取っているので、語り部(筆者)による客観的な解説で語られるのですが、この場合に陥りやすいミスに「喋りすぎ」があります。
幾らでも書けてしまうので、幾らでも書いてしまうのです。
例えば今作の場合「昔アラビアの国に〇〇という部族があり」などが挿入されがちです。本作にそんな説明はありません。不要なのです。
私は途中まで「アボリジニ」の話かな? と思っていたのですが「驢馬」が出てきたのでアラブと確定します。
こうした特定記号で有名なのが、絵画での「持物」。女性の絵が描かれ、隣に百合の花があれば「聖母マリア」です。「甲冑」があれば「アテナ」で、「薔薇」があれば「アプロディーテ」です。
こうした特定記号があれば、それで十分。他に必要とされる描写へ文量を回せます。
更に、「キャラクター編」でご紹介した「会話の定義」。「人物の情報」か「物語を動かす会話」以外不要! という理論。
本作、これ以外の会話は出てきません。しかも短文です。
こうして構成的に無駄を排除するからこそ、「迫力」あるあのシーンを目一杯書けるわけです。
文章が上手い! とは、こういう事だ! の具体例と言えます。
勿論、これを可能にするには言い回しや語彙力の高さが極めて重要で、読書量の凄まじさが容易に想像できる熱い文章です。
前回も言いましたが、何度でも言います。
一度読んでみてください! 日本語という文章が如何に美しく、どれほどの改良を加えられるのか、一ページ目で確認できます。
こうして作り出された「迫力」ですが、なぜ、ここに迫力が必要だったのか?
これが、本作の大テーマです。
「人は、見たいように見、聞きたいように聞く」
擦られ過ぎた安直な台詞を持ち出してしまいましたが、別の言い方にすれば「虚構」についての考察でしょうか。
伝承や宗教とは、フィクションの最たる例であり、人の結束を可能にした共通認識であると大ヒットした「サピエンス全史」の主題にも上げられました。
では、実際に「フィクション」に陥る経緯を妄想してみましょう!
それが、本作のメインストーリーでした。
現代ほど高度ではない天文学知識しか無い人間が、あんなものを見れば、それは「神」にでも見えましょう。しかも、それで財形が潤ってしまうのならば、神話を語り継ぐ根拠にまでなってしまいます。
こうした末裔達が、「フィクション」の真実に邂逅する時、どのような反応を示すのか?
この「迫力」ある脅威を目の当たりにし、伝承を否定する事ができるのでしょうか? それとも肯定か?
こうした「トンデモ」ない現実と虚構の狭間へ、読者を誘う。
それが本作『流星の骸』という作品の最大の見せ場であり、テーゼでした。
……はい。小手先の言葉遊びをチラつかせてしまい、申し訳ありません。
このような形で書いたのも、前回作「繭」は、汲み取り方をある程度読み手に委ねている部分がありましたので、内容を説明してしまっても良いかと思いましたが、今作は内容を説明しすぎると面白さが半減してしまう性質の作品でしたので、この程度で収めました。
にしても、文学してますね!
今回で三作目ですので「鹿節」も見えてきました! 面白かったです。
おめでとうございます!
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